FSRI

【分科会第1回 -質疑応答-】

【第1回 FSRI 質疑応答】 フードスタディーズとFSRIの役割
令和2年度第1回分科会

講演 田中愛子 (Aiko) FSRI (フードスタディーズ研究会)代表
司会 青山明 (Akira) 未来投資研究所理事
主催 青山アリア (Aria) 未来投資研究所理事

質疑応答 : 質問者の名前は頭文字で表記

田中愛子先生

 

質疑応答

主催者挨拶 (Aria)

フードスタディーズということを、田中愛子先生を通じて初めて知りました。その時に、「食卓の上のフィロソフィー」ということを教えていただきました。食卓の上にあるものを通じて、世界すべてがつながる、ということ、そして、そこを考えるだけで、どんどんいろんなつながりを作っていって、それを深く考えていくこと、それがフードスタディーズなんだ、という説明をいただきまして、なんてわかりやすい、これそのものがSDGs、要するに、食卓の上にあるもの、プラス、誰一人取り残さない、という概念を、SDGsの根本でもあると思うのですが、この二つを組み合わせることによって、つながりを作っていきます。そして、それぞれを考えていくことによって、結果的に、SDGsの17の目標というところに全部当たるんです。で、当たって、大体解決策はパッと見つからないですけど、そのつながりから、意外なつながり、まあ、17番目のいろんなパートナーシップだったり、そういうところから、新しいポジションが生まれてくる。まあ、調理のようなものですよね。そして、このフードスタディーズを、日本の中で浸透させていくことによって、誰もが参加できる。そして世界的にもフードスタディーズというのは、どんどん浸透していく中、我々で、FSRI(フードスタディーズリサーチインスティチュート)を立ち上げて、そして、これを、政府を含め、官民学連携で、様々なものをつなげていくということで、今回、第一回が立ち上がったと思います。
今回ご参加されているメンバーからご質問等を受けたいと思います。多くの、例えば、料理されておられる方、JALの方、ホテル産業の方、観光産業、研究者の方もおられます。ご質問おありでしょうか?

T
この内閣府の地方創生プラットフォームの分科会を立ち上げて、日本全体として動いていく必要性があるのかなあとは思うんですけども、この内閣府地方創生分科会を立ち上げていく意味であったりとか、その価値をお聞きしたいです。

Aiko
一つは、このフードスタディーズの考え方とか、アプローチの仕方というのは、日本ではまだなかなか根付いていません。これは、ホリスティックと言いまして、すごく学際的なものなので、非常に難しい。日本の縦割りの学部の中では、なかなか起こりにくいところがあるので、分科会の立ち上げによって、まずは、内閣府というところに認知されますので、それで、皆さんが、ま、ひとつ考えてみようか、と思うことができるんじゃあないかと思っています。それから、未来投資研究所は、いろんなところで、幅広くお仕事をされていますから、このフードスタディーズの、点が面に広がっていくお手伝いが一つはできるんじゃないか。それから、私は大阪をベースにしておりますので、大阪の活動はわかるんですが、中央とのつながりによって、これからもっとこのフードスタディーズが立ち上がると、食卓の上のフィロソフィーの理念を通して、大きく、いろんなつながり、コミュニティーの広がりができるんじゃないか、そこを期待しています。

Aria
未来投資研究所の青山アリアです。今、学際と田中愛子先生がおっしゃってたと思うんですが、地方創生プラットフォームというのは、現時点で全国で900近い団体がメンバーになっております。その900というのは、政府機関も含めて、自治体、民間の企業、NPOなどの団体で構成されておりまして、この内閣府地方創生プラットフォームの上に、我々のSDGsのためのフードスタディーズということを挙げることによって、我々が届かない分野のところまで、参加者として手を挙げていただくという可能性を一つ広げるという考えなんです。そしてもう一つが、最初に申しましたように、ここの分科会で話されている内容というのは、最終的にレポートにさせていただくんですけど、このようにご質問していただいた件も、もう少し深掘りしていきまして、これを文章に起こし、それを提出するんですが、それが今後の政策提言に生かされる可能性も非常に高いというところで、分科会という形に立ち上げております。

K
イギリスはですね、美味しいものがないと。何故ならば、あれが美味しい、これが美味しい、というのは、それは紳士たるものではないと、紳士たるものは、そういったことは言ってはいけないと。それから、もう一つあったのは、カトリックの教会の信者たちが、神父さんの生誕100年を記念して、食事会をやるんですね。それが美味しそうに食べてはいけない、まずそうに食べないといけないという、戒律というのがあるらしくて。ところがですね、それがあまりに美味しいんで、みんなガツガツ食べ出したと。そういうことは、料理研究家としていかがなんでしょうか。

Aiko
イギリスの料理というのはいろいろ揶揄されますが、イギリスには郷土料理がないんですね。イギリスって、全般全部同じような料理食べるんです。イタリアはリージョナル料理があります。フランスもあります。ということは、イギリスは食がなかったんです。本当に貧しい国だった。コロンブスが見つけてジャガイモを持って帰ってくるまで、ジャガイモもないわけですから、肉と草しか食べれないわけで、本当に食材が少なかったというのが、一つはグルメラインではないことです。反対に、イタリア、ラテン系はやはり食材に恵まれています。地中海を持っていますし、イタリアは地中海に突き出ていますので、海のもの、山のもの、一番、そして、太陽が当たる。イギリスは残念ながら、太陽が当たらないということは、食料がないんですね。だから、ガストロノミーは発展しにくかったと思います。今イギリスは金融関係がすごいですから、ロンドンの町では、移民の人がたくさんいますので、とっても国際的な食べ物を作っている国です。だから今食べ物が発達するところというのは、食材があるというところだと思います。そして、カトリックの食べ方とかも、いろいろ言われますけど、宗教というのは、暗黒の宗教時代というのはどこにもありまして、あの時代というのは、宗教弾圧によって、民衆を押さえていきましたので、誰もが禁欲的な生活をしないとならなかった。その生活状況というものが、社会状況が非常に食べ物と反映しているということだと思います。カトリックの方、今は何が一番大きいかと言いますと、大きなチェンジは、ベジタリアンが出てきたことです。ベジタリアンは、精進料理とは違います。ベジタリアンは、環境のために食べないんですね。だから、牛を食べる、今、人間があまりにも食べすぎて、そして、牛に何トンという水がいって、そして穀物も費やされる、だけど反対にそのものがなくてアフリカではたくさんの飢餓が始まっている、ということで、牛を食べない。ところがこれがどういう意味かというと、ヨーロッパでは、牛とか動物を食べて生きてきた民族です。それが牛を食べないということは、その人たちの人生をかけて抵抗しているんですね。食べ方を考えていこう、ということです。それが今ヨーロッパでは40%に増えています。だから、おいしいとか、今は、ガストロミーという一つの分野、そこのガストロミーというのは、シェフたちが作る美味しい料理というのがテーマですけど、今その料理学校のCIAというニューヨークの大学でも、半分以上がフードスタディーズをしています。と言いますのは、ガストロミーも食べ方を考えていかないといけない。おいしいことを追求する時代はもう、それは永遠に続きますけども、次の段階、美味しさと地球の存続をどう一緒にやっていくか、というのが、今のテーマだと私は思っています。

L
先週のフードツーリズム学会で話を聞かせていただいて、早速アカウントを追加してスタッフから情報をいただきありがとうございます。私は、所属は、立教大学観光学研究科、今、博士コースに在籍のLi Naと申します。中国からまいりました。私は先生がおっしゃってくださったグストラボインターナショナルのプログラムに大変興味を持っていて、コロナの中に、去年と今年の進行状況を教えていただければと思います。2つ目の質問としては、今田中先生がやっているこういうプログラムの中に、日本人の若い人の取り組みはどうなっているのかということを教えていただけますか。

Aiko
グストラボですけども、今はとりあえず、大体イタリアとアメリカ、アメリカからイタリアに300人レベルで、送っていたわけですけども、今このコロナ禍においては、そこをできませんので、今Zoomに切り替えています。その中で、一つの新しい動きは、いまイタリア料理が非常にまた盛り返しておりまして、CNNニュースの中でもイタリアの各地のものを食べて、彼女たちがその地域で作ったものを食べるという非常に強い志向があります。スローフード的なものがあるので、それがこのコロナ禍において、料理の会としては非常に面白いトピックになっています。シチリアの方で千年のお城があるそうなんですけども、そこ何も使われていないので、グストラボに市が提供されて、そこでイタリアの、この秋から発表されると思うんですけど、イタリアの歴史、ライフスタイル、食文化をZoomで発信していきたい。その後に、そこへ、ツーリズムとして、留学生だ、一般の方を連れていくようなことをしたいということを言われていました。また反対に、それを日本でもやってほしい、日本に対しても非常に期待が高まっているというので、私今考えているところなんですが、これ大きなことで、世界の人が日本というのを食で見つめているということで、私自身はすごくビリビリ感じるんですけど、なかなか日本では、ゆっくりですね、どういう風に組み立てるかということを考えていかないといけません。
それからあなたがおっしゃる通り、若い人がですね、いま地方で、若い農家が大変増えてきました。で、これは、一つの流れだと思います。そして、若い人たちが、一つの限界を感じているんだと思います。都会での新しい、今までの仕事に就くということの限界の中で、心理的にも、それから精神的にも、未来志向を持った時に、このまま続けていいんだろうか、ということで、あちらこちらに行きますと、若い農家が増えています。で、ひとつ、十和田なんかに行きますと、若い農家がハーブ農園をしたり、オーガニックで作っていたり、たった1人でアルゼンチンに行ったり、ブラジル、アメリカ行って、1人で酪農をしている人もいます。それから奈良では、タルタル農園さんって、ずーっとオーガニックの畑をしている、のはいますけれども、そういう農業に行くというダイレクトラインはあるんですけども、やっぱりこのフードスタディーズ的なムーブメントとか、意識は、非常に残念ながら、日本の若い人は低いです。だから私は、今日本の若い人がその意識をもっと持たないといけないと思っているので、フードアクティビストというのを作って、連携していけば、もっと若い人にバトンを渡さないといけないので、一般の民間の人、サラリーマンの方とか、若い事業者の方たちと一緒にやっていきたいなあ、というのは、Li Naさんがおっしゃっている通り、その辺は、ギャップがありますね。ぜひ一緒にお願いします。

L
私、卒業したら、日本で、NPO法人を立ち上げようと今考えています。そこで、主に若い人を中心にサポートをあげたい。確かに先生のおっしゃった通り、限界というものは、夢を持っても現実的にそれができない状況があるので、それをお互いに支え合うプラットフォームを作りたいのです。またいろいろお話聞かせてください。

Aiko
ありがとうございます。ぜひご一緒にやりましょう。

Aria
みなさま、いろいろご質問ありがとうございます。クロージングノートとして、愛子先生、もう一言だけお願いできますでしょうか。

Aiko
こういうフードスタディーズということに耳を傾けていくださる方が1人2人と増えていって、日本でのフードスタディーズをちゃんと立ち上げて、世界に日本の食のあり方、日本の健康、日本の素質、日本の度量みたいものを、伝えて行けたらいいかなと思います。今日はご視聴ありがとうございました。

 

前回配信:分科会1回「講演」

 

参考資料

1 内閣府地方創生SDGs官民連携プラットフォーム

この分科会が所属する内閣府地方創生SDGs官民連携プラットフォームは、「SDGsの国内実施を促進し、より一層の地方創生につなげることを目的に、広範なステークホルダーとのパートナーシップを深める官民連携の場」として、内閣府が設置しているプラットフォームです(https://future-city.go.jp/platform/)。このプラットフォームにおいて分科会を設置することで、「地方創生につながる新事業の創出」を目指すことができます。未来投資研究所は、その会員として、食に関する分科会を立ち上げ、このSDGsポータルサイトで、FSRI(Food Studies for SDGs Research Institute)のセクションを設けました。

2 田中愛子先生のサイト

KITCHEN Conversation(株式会社キッチンカンバセーション)

https://kitchen-conversation.jp

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