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持続可能な国際スポーツ大会のさらなる進化を目指して──VNL2025 千葉大会の挑戦

7月9日(火)から20日(日)の12日間にわたって開催される買取大吉バレーボールネーションズリーグ2025千葉大会(VNL2025 千葉大会)は、前年の福岡大会に引き続き、SDGs推進国際スポーツ大会として実施されます。この千葉大会では、持続可能な世界の実現にとって非常に大きな要素の一つである「水」に、日本での大規模国際スポーツ大会として初めて取り組んでいます。

毎年日本の異なった地域で開催されるバレーボール・ネーションズ・リーグ(VNL)日本大会は、日本で毎年開催される世界最高レベルの各国代表選手チームによる大規模国際スポーツ大会です。VNL日本大会組織委員会は、国際バレーボール大会そのものの成功に万全を期すことはもちろん、開催地に貢献する様々なSDGsの取り組みを重ねています。以下に本大会のSDGsの取り組みを紹介します。

(文中に示されているSDGsの各目標番号には、<まとめ>では通常使われているキャッチコピーを、<詳細>ではそれらの代わりに、2015年に国連で採択されSDGsが提示された「2030アジェンダ」での記述の日本語訳を用いています。出典:公益財団法人日本ユニセフ協会「SDGs Club」)

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(1) VNL2025千葉大会で実行されるSDGs <まとめ>

(1)食品ロス軽減 <SDGs-目標-12> つくる責任つかう責任

①弁当配布に代わるミールチケットによる、運営スタッフのフードロス削減

②ホテルにおける選手団らのフードロス軽減

 

(2)ごみの排出削減 <SDGs-目標-12> つくる責任つかう責任

① スティックバルーンの回収と技術イノベーション活用によるゴミ処理

② ゴミ分別

③ 小型充電式電池の排出方法やリサイクルに関する情報配信(新たな取組)

 

(3)会場設置及び運営 <SDGs-目標-12> つくる責任つかう責任

①  前回の福岡大会で使用された資材を用いた会場設置と次回大会での再利用

 

(4)多様なスポーツ機会創出 <SDGs-目標-4> 質の高い教育をみんなに

①高校生を含む子ども観戦料金の設定

②小学生の観戦招待

③子どもたちの職業体験プログラム(新たな取組)

④車椅子の子どもたちの招待(新たな取組)

⑤中学校へのバレーボール出前授業

⑥高齢者招待や介護施設でのTV観戦促進(新たな取組)

⑦観戦料金設定による外国チーム同士の海外戦観戦の機会創出

⑧ふれあいゾーン施設による選手と観客・市民との交流機会創出

⑨特別チケットやコート間近観戦席設置による多様な観戦体験の創出

 

(5)大会と水に関する調査と啓蒙 

<SDGs-目標-6> 安全な水とトイレを世界中に

<SDGs-目標-12> つくる責任つかう責任 

<SDGs-目標-15> 陸の豊かさも守ろう

①ウォーターフットプリントの計算(新たな取組)

②クイズとアンケート実施(新たな取組)

 

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(2) VNL2025千葉大会のSDGs <詳細>

1.  VNL日本大会のSDGs継続取組

昨年度のVNL2024福岡大会でスタートし定着した種々のSDGsの取組が、さらに工夫を重ね、新しい試みを取り入れ、実行されています。

(1)食品ロス軽減

<SDGs-目標-12> 生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう

 

①ミールチケットによる運営スタッフのフードロス軽減の取組み

通常大規模なスポーツ大会では、さまざまな役割で従事しているスタッフの食事には弁当が配布されています。しかしその役割ごとに食事のタイミングが異なるなどのため、事前に必要な食事の数を把握することが困難なことから余裕を持った数の弁当が用意されます。またアレルギーなどの理由から、弁当のように画一的なメニューではすべてのニーズに対応できないケースもあります。これらの要因により、食べられず余った弁当が大量に発生し(2020年東京オリンピックでは約24%が廃棄)、大量の食品ロスの原因となっています。VNL2025千葉大会では、この課題に対する解決策として、前年の福岡大会に引き続き、弁当配布を廃止し、その代わりにミールチケットを配布し、徒歩圏内の商業施設のレストランや、会場前に出店するキッチンカー、また国際バレーボール連盟(FIVB)の関係者の宿泊施設がある幕張で使用できるようにしています。スタッフが自身のタイミングで注文できるようにすることで、2,000食にものぼると予想される余剰供給によるフードロスの大幅な削減が実現します。また、この取り組みは地元飲食店への貢献にもつながり、地域の活性化や街の賑わいの創出にも寄与します。

 

②ホテルにおける選手団らのフードロス軽減の取組み

各チームの食事時間に合わせて小分けに調理し、温かい料理を提供し食べてもらう工夫をします。ポスターやテーブル上のポップで選手たちへのフードロスに関する呼びかけも実施します。

 

VNL2024 福岡大会で地域の飲食店でミールチケットを使用する外国人スタッフ(提供/CB,Ltd)

 

 

(2)ゴミの排出削減

<SDGs-目標-12> 生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう

 

①スティックバルーンの回収とゴミ処理の技術イノベーション活用

バレーボールの応援に欠かせないスティックバルーン。本大会では、ゴミ処理のイノベーション技術を押し進め積極的な技術開発によってSDGsに取り組んでいる株式会社輝陽(工場は広島県山県郡北広島町)をパートナーとして、使い終わった後のスティックバルーンをはじめとするプラスチック製品の高温高圧加水分解システムによるCO2排出量を大幅に抑えたゴミ処理等により、環境へ与える負担を軽減し、持続可能な大会を目指しています。

 

VNL2024 福岡大会。スティックバルーンでの応援で盛り上がる会場(提供/CB,Ltd)

 

②小型充電式電池の排出方法やリサイクルに関する啓蒙(新たな取組)

スマホやデジタルカメラをはじめ現代生活のあらゆる場面で活躍している電子機器。その機能を支えているのが小型充電式電池です。しかし、その廃棄方法の周知が浸透しておらず、誤った方法の廃棄による火災事故などが頻発しており、深刻な社会問題となっています。これらの小型充電式電池には希少金属資源が含まれており、適切に回収・リサイクルを行うことは、環境保全および火災予防の観点からも極めて重要です。本大会では、一般社団法人JBRCが取り組む小型充電式電池の回収とリサイクルについて啓蒙するチラシを配布します。

 

(3)会場設置及び運営

<SDGs-目標-12> 生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう

1階試合会場の、目の前でゲームを観戦できる試合コート周りの特別観客席、2階のファンと選手の交流の場、特別体験ラウンジ、種々のスタッフの部屋、通路のパネルなど、大会に必要なすべての施設が独自設計により、前回の福岡大会で使用された資材を用いて組み立てられ、それら資材は大会終了後にさらに次回大会で再利用される予定です。

 

(4)多様なスポーツ機会創出

<SDGs-目標-4> だれもが公平に、良い教育を受けられるように、また一生に渡って学習できる機会を広めよう

 

①子ども観戦料金の設定

スポーツ競技会の観戦チケットは、子ども観戦料金は小学生以下を対象とするか、人気のマッチには設定がない場合が一般的です。VNL2025千葉大会では、すべての試合において、高校生までを子ども観戦料金としています。日本で世界のトップアスリートの試合を生で観戦できる貴重な機会を、より多くの子どもたちが享受できる価格設定となるよう配慮がなされています。

 

②小学生の観戦招待

千葉市内の小学生が招待され、真剣勝負を生で観戦することで、スポーツの魅力である「感情を揺さぶる瞬間」を体感。これらの体験が、子どもたちの成長や多様性への理解につながることが期待されます。

 

VNL2024 福岡を観戦した子供たち(提供/CB,Ltd)

 

③子どもたちの職業体験プログラム(新たな取組)

大規模国際スポーツ大会という得難い機会での色々な仕事を現場で体験してもらうプログラム。

 

④車椅子の子どもたちの招待(新たな取組)

肢体不自由協会とのコラボレーションで、車椅子使用の子どもたちにエキサイティングな大規模国際スポーツ大会を現場で体感してもらい、全ての人々が公平で質の高い体験を享受できる機会を創出しています。

 

(画像はイメージです)

 

⑤出前授業

千葉市内の中学校を対象に、バレーボール体験教室が実施されます。この体験教室では、技術指導に加え、スポーツを通じた夢への挑戦や、努力することの大切さを伝えることで、子どもたちの心を動かし、将来への一歩を後押しすることを目指しています。

 

⑥高齢者への取組(新たな取組)

今大会では、千葉市内の高齢者の方々にも積極的に参加いただけるよう、観戦招待等の取り組みが新たに計画されています。地域の高齢者に実際の試合を観戦していただくことで、臨場感あるスポーツの魅力を体感してもらうとともに、外出機会の創出や地域とのつながりの促進、心身の健康維持にもつながることが期待されます。また、世代を超えた交流のきっかけにもなり、地域全体の一体感を高める取り組みとなります。また、直接会場に足を運べない高齢者のために、応援グッズを渡しての介護施設でのTV観戦の促進なども計画されています。

 

⑦外国チーム同士の海外戦観戦の機会創出

外国チーム同士の海外戦にできるだけ多くの人に足を運んでいただくための料金設定がされています。この取組によって、観客と選手が一体となって日本における国際大会の価値を高め、サステナブルな国際スポーツ大会の開催をさらに促進させることが期待されます。

 

⑧選手と観客・市民とのふれあいの機会創出

試合を終えた選手と観客が触れ合える特別プログラムの場や、チケットを持たない一般市民と選手たちと触れ合えるゾーンが提供されています。

 

VNL2024 福岡大会で話題を呼んだファンゾーン(提供/CB,Ltd)

 

 

⑨特別チケットやコート直近観戦席

特別チケットによって、激戦を文字通り間近に見ることのできるコート直近の観客席、飲食を楽しむ特別ラウンジ、選手との交流が可能な特別チアゾーン、選手見送りエリアなど、国際スポーツ大会での貴重な体験が提供されます。

 

 

2.大会の新たなチャレンジ・更なる挑戦

大会と水に関する調査と啓蒙(新たな取組)

<SDGs-目標-6> だれもが安全な水とトイレを利用できるようにし、自分たちでずっと管理していけるようにしよう

<SDGs-目標-12> 生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう

<SDGs-目標-15> 陸の豊かさを守り、砂漠化を防いで、多様な生き物が生きられるように大切に使おう

私たちにとってなくてはならない「水」。その「水」との関わりは、今まで大規模スポーツ大会ではあまり顧みられて来ませんでした。特に、目に見えない水(バーチャルウォーター)と呼ばれる、製品やサービスに使われる水の重要性は、ほとんど注目されることがありません。本大会では、大規模国際スポーツ大会としては日本で初めて、ウォーターフットプリントの計算によって、大会に関わっている目には見えない水に関する調査が開始され、その観客への啓蒙が取り組まれています。

 

①ウォーターフットプリントの計算(新たな取組)

ウォーターフットプリントとは、製品やサービスの製造・消費の過程で、つまり目に見えないところで、どのくらいの水が使われているかを計算したものです。大会では、大会に使われるバレーボール球ほかいくつかの例においてウォーターフットプリントが計算されています。

 

② クイズとアンケート(新たな取組)

本大会で使用される製品などのウォーターフットプリントの計算結果は、大会会場およびチケット販売サイト(ヴェリタスポーツ)で配布されるクイズとアンケートの実施によって、観客を対象に大会での水の使われる量やその役割についての啓蒙活動が実施されます。またアンケートの解析によって水とその役割がどの程度認識されているかの調査が行われ、水と大規模スポーツ大会に関する今後の取組につなげるようにしています。

以上のように、VNL2025千葉大会では前年の福岡大会に引き続き、スポーツとSDGsを結びつけ、そこで実施された数々のSDGs遂行の取組を継承、発展させています。さらにVNL2025千葉大会では、日本における大規模国際スポーツ大会としては初めて、持続可能な社会にとって非常に大切な「水」に取り組み、この挑戦によって、サステナブルな大規模国際スポーツ大会をさらに前進させる大会となっています。

 

大会が開催される千葉ポートアリーナ

 

VNL2025 千葉大会公式サイト

https://www.live-link.life/online/vnl2025

 

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