SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は、現代社会において欠かせない情報・コミュニケーションツールです。大人だけでなく、今や子どもたちの日常生活にも深く浸透しています。一方で、知らない人との接触や犯罪、不適切な情報への接触、長時間利用など、子どもへの影響が懸念されています。

世界で広がる子どものSNS利用規制
欧州連合(EU)の欧州委員会は2026年9月17日、子どもをオンライン上の危険から守るための法案「EU KIDS Act」を提案しました。13歳未満のSNS利用を禁止し、13歳以上15歳未満については、保護者が管理し、機能を制限した専用アカウントで、利用は1日1時間までとする内容です。また、無限スクロールなど、利用を長引かせる仕組みへの対策や年齢確認の導入も盛り込まれています。法案は今後、関係機関での協議を経て成立を目指す段階です。(※1)
ドイツでも、政府が10月14日に子どものデジタル環境を保護する政策方針を閣議決定し、13歳未満の利用を原則禁止する方針を示しました。(※2)
フランスでは、15歳未満の利用禁止を定めた条項が8月に憲法評議会で違憲と判断され、政府は新たな法案を検討しています。ギリシャやポルトガルでは、年齢制限や保護者の同意を求める制度の導入が進み、ノルウェーも年齢制限の法案提出を予定しています。(※3、※4、※5)
こうした動きは欧州以外にも広がっています。
オーストラリア、インドネシア、マレーシアでは16歳未満を対象とした利用制限が始まり、トルコやアラブ首長国連邦(UAE)でも年齢制限が決まっています。インドのカルナータカ州や米国カリフォルニア州でも規制が進んでいます。(※5)
さらに、カナダや英国では利用制限に向けた法整備が進められ、デンマークやニュージーランドでも導入が検討されています。(※5)
国によって対象年齢や規制の内容は異なりますが、共通しているのは、子どもや保護者だけに注意を求めるのではなく、SNSを提供する事業者にも対策を求めようとしている点です。
なぜ子どものSNS利用を制限するのか
規制の背景には、SNSの仕組みそのものが、子どもの心身に影響を与える可能性があるという問題意識があります。
例えば、画面をスクロールし続けることで次々と投稿が表示される機能や、利用者の関心に合わせてコンテンツを推薦する仕組みは、長時間の利用につながることがあります。ほかの人と自分を比べたり、投稿への反応を気にしたりすることが、自己肯定感や心の健康に影響するとの懸念も指摘されています。
朝日新聞のインタビューで、EUの専門家パネルで共同座長を務める児童精神科医のヨルク・フェーゲルト博士は、思春期前は自尊心の発達に重要な時期であり、他者との体形比較が自尊心の低下や摂食障害につながるリスクがあると指摘しています。また、同博士らの研究では、1日4時間以上SNSを利用する子どもの利用時間を1日1時間に制限したところ、治療を要する不安やうつの症状が半減し、睡眠の質と自尊心も改善したといいます。ただし、これは特定の研究の結果であり、すべての子どもに同じ効果があるとは限りません。(※6)
一方で、SNSが子どもにとって有益な場になることもあります。身近な人には相談しにくい悩みを抱える子どもや、障害のある子どもなどにとって、同じ経験を持つ人とつながり、情報や支えを得られる場合もあります。
そのため、年齢制限だけで問題がすべて解決するわけではありません。子どもを危険から守ることと、SNSが持つ交流や情報収集のメリットを生かすこと。その両方を考える必要があります。
日本でも対策が議論に
日本でも、子どもを取り巻く状況は深刻です。警察庁によると、2025年にSNSで知り合った面識のない相手から性被害などに遭った18歳未満の子どもは1,566人で、高い水準が続いています。小学生の被害は167人で、過去10年で最も多くなりました。子どもが低年齢のうちから被害に遭っている実態が浮かび上がります。(※7)
国内でも、対策の議論が進んでいます。こども家庭庁のワーキンググループは7月にまとめた中間整理報告書で、SNS事業者に、リスクの評価と保護措置、その内容の公表を求める方向を示しました。年齢確認も、自己申告では限界があるとして見直しを検討しています。一定年齢未満の利用を法律で制限するかどうかは、政府で引き続き議論するとしています。(※8)こども政策担当大臣は7月31日の記者会見で、年末を目途に最終報告を取りまとめ、青少年インターネット環境整備法の改正法案を次期通常国会へ提出することを目指す考えを示しました。年齢による一律の規制の是非は、SNSが子どもの居場所になりうる点なども踏まえ、議論を続けるとしています。(※9)
子どもを守るためには、家庭や学校で利用方法を教えるだけでなく、サービスを提供する企業側の対応も欠かせません。年齢確認を適切に行うことや、知らない人からの接触を防ぐ仕組み、利用を過度に長引かせない設計など、子どもの安全を考慮したサービスづくりが求められます。
SNSは、子どもにとって危険な面がある一方、人とつながり、情報を得るための大切な手段にもなっています。利用を一律に否定するのではなく、子どもが成長に応じて安全に使える環境をどう整えるか。世界で進む規制の議論は、社会全体で考えるべき課題を投げかけています。
SDGsとの関係
目標3「すべての人に健康と福祉を」:SNSの過度な利用やオンライン上の被害から、子どもの心身の健康を守る。
目標4「質の高い教育をみんなに」:子どもが情報を適切に見極め、デジタル技術を安全に活用する力を身につける。
目標16「平和と公正をすべての人に」:オンライン上の犯罪や被害から子どもを守り、安心して暮らせる環境を整える。
参考・引用
※1 European Commission, “EU KIDS Act: helping children navigate a safer online world”
https://commission.europa.eu/news-and-media/news/eu-kids-act-helping-children-navigate-safer-online-world-2026-09-17_en
※2 German Federal Government, “Cabinet: Protecting children in the digital world”
https://www.bundesregierung.de/breg-en/news/cabinet-key-points-child-media-protection-2457274
※3 Conseil constitutionnel, “Décision n° 2026-911 DC”
https://www.legifrance.gouv.fr/cons/id/CONSTEXT000054952977
※4 Norwegian Government, “Norwegian social media age restrictions law on track to be introduced this year”
https://www.regjeringen.no/en/whats-new/norwegian-social-media-age-restrictions-law-on-track-to-be-introduced-this-year-this-is-how-the-age-limit-for-social-media-will-work/id3157276/
※5 Reuters「Factbox-From Australia to Europe, countries move to curb children’s social media access」
※6 朝日新聞「子どものSNS制限に動くEU 議論主導の精神科医が明かす真の標的」(2026年10月28日)
https://www.asahi.com/articles/ASVBW45WVVBWUHBI02LM.html
※7 警察庁「令和7年における少年非行及び子供の性被害の状況について」
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/pdf_r7_syonenkohosiryo.pdf
※8 こども家庭庁「青少年インターネット環境整備法の在り方等に関する検討ワーキンググループ 中間整理報告書」(2026年7月)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/7ce4fa4b-f167-4913-970e-d2fb48108e32/8e1e92bc/20260731_councils_internet-kaigi_39.pdf
※9 内閣府特命担当大臣(こども政策担当)「黄川田大臣記者会見要旨」(2026年7月31日)
https://www.cfa.go.jp/speech/5299c309


