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江崎貴久さん「日本発の地域振興型エコツーリズム」-その2- 釣りの体験ツアー:観光客に地元の資源を楽しんでもらう

江崎貴久さんへのインタヴュー                                                          聞き手:青山アリア

今回は、観光と地域振興を、見事にまとめ上げ、日本発の地域振興型エコツーリズムを創造し、実践されている、江崎貴久さんに、地元鳥羽市で、お話を伺いました。江崎貴久さんは、老舗旅館「海月」の女将であり、有限会社OZ(オズ)の代表取締役として、また、伊勢志摩国立公園エコツーリズム推進協議会の会長として、長年新しい地域のあり方を提示し推進してこられているパイオニアです。この記事は、伊勢志摩観光一般に関する一連の長いインタビューの中から、海の豊かさ、ジェンダー、教育、働きがい、まちづくり、パートナーシップなど、SDGsに参考になる話題を取り上げ、江崎さん自身の言葉をできるだけ忠実に再現しながら、お届けします。

その➀ 鳥羽という地域

  •    漁師町鳥羽:漁師さんたちが守る海の豊かさ
  •    日本の資源利用のルール
  •    漁業に携わる人々の変化
  •    海女文化に象徴される漁村のジェンダーの平等性

その② 釣りの体験ツアー:観光客に地元の資源を楽しんでもらう

  •    無人島ツアー:資源を守るのは地元の人たち
  •    観光が土地の人と関わらないとできないということ
  •    地域振興型の鳥羽式エコツーリズムの必然性

その③ 島っ子ガイド:教育の地域性と普遍性

  •    子供たちから島全体、そして未来に
  •    エピローグ

 

釣りの体験ツアー:観光客に地元の資源を楽しんでもらう

AA: ――エコツーリズムというところに目をつけられたのは、どういうきっかけですか?

KE: 何かね、エコツーリズムをやろうっては思ってなくって。一番最初に、何か、自分がここにいて、一番楽しいことを、お客さんにさせてあげられてない、ってのがあって。

今はね、こうやってご案内しても、大好きなんですよ、観光施設も。だけど、その時は、小さい時から海に行って遊んだりしてて、自然の中が一番好きやったのに、どんどん、どんどん、埋め立てをしていくし。観光施設ができるから、埋め立てて行かれるから、嫌いやったんですよ。

で、じゃあ、自分がしたいことを、お客さんにさしてあげられるようにするには、っていうので、釣りの体験を始めたんですけど。ミキモトの前で、釣りとか、いくらでもできたので、私が小さい時は。で、二十歳を過ぎて、23の時とかに、修学旅行の子供たちに釣りを、ていうのに、つれてったら、びっくりするぐらい、何も釣れなくて。この10年の間に何が起きたん、て、いうぐらいに、全然、魚が釣れなかったので。

その時に、ふたつの問題があるじゃないですか。ひとつは、釣れないと困る、っていうのと。もう一個は、で、この魚がいないってことをどうすんの、っていうことと。

今すぐには、釣れるところに連れて行くしかないから、それで、島がたくさんあるので、で、個人でやってる遊覧船の人たちもいたから、その人たちに連れていってもらう、っていうように作ってそれでお願いして始めたんですね。

で、魚がいいひんということは、すぐその私がどうにかできることではないけれど、その観光なんで、人に伝えることができるっていう。全て楽しいことだけじゃなくって、魚が減ってしまうとか、環境が変わって行くってことを、この、単に、釣りで遊び、じゃなくって、わかってやってほしい、っていうのがあって、やり始めたんですね。

 

無人島ツアー:資源を守るのは地元の人たち

KE: 無人島のツアーも、近ツー(近畿日本ツーリスト)さんが、無人島の何かやる、って決めちゃったんですよね。で、私たちがたまたま釣りをしてたので、県と近ツーぐるみで近付いて来て。無人島は、離島の人らの大事な島なので、そこは行ったら素敵なんは、私も思うけど、あそこは、行っちゃいけません、て、最初言ってたんです。

言ってたんですけど、考えてみたら、もうすでに無人島が観光施設化してるんですよね、ここは。で、私がやりませんとか、できません、ていうことが、島を守ることにならへんな、と思って。だったら、も、観光で生きてきてるし、観光の、嫌なとこをわかってるから、自分が責任を持って、間に入ってやったほうが、守れると思って。それで無人島のプログラムを作ったんですね。その代わり、もう、県とか、近ツーの方とか、都会の方は、売ることだけに専念してください、現場は私がやります、って話をして。現場のことは、彼らには、わかんないじゃないですか。

で、島の人たちとずっと話をしていったら、みんな、わかった、きくさんの言いたいこと分かったし、で、島をよくしたいって気持ちも伝わるから、わかったよ、って、言ってくれるんですけど。でも、ね、やっぱり、ルールって大事やから、私たちはこういうルールを決めるので、それを守って、お客様を入れます。例えば、一回に何人しか入れません、この磯場には、三日以上続けて入りません、生き物はこんな風に触ります、とかいうのを、全部決めて。漁協さんとかに話しまして。こんなん、いらんのにって、最初言われたんですけど、でも、やっぱりねー、そのルールを紙にして、署名もして、出したので、漁村の人たちも、みんなで共有してもらえるので、信用もしてもらえるし、信頼もしてもらえるし。あかんかったら、ダメって、いってくれるじゃないですか。

で、そんなのをしてたら、何かこう、環境省の人とか、が、そんなん、エコツーリズムって言うんや、って言われて。えっ、そうなんや、みたいな。そんなん、最初から、普通に考えたら、使うもの守るの、当たり前のことやから、わざわざ、エコツーリズムって名前つけられなくても、普通のことやし。で、やってたんですけど。まー、こういう考え方として、前に出さないと、失っていってる考え方なのかな。話が深くなっちゃってすいません。そんないきさつですね。

 

観光が土地の人と関わらないとできないということ

AA: ――どういうところを、ピックアップしていってらっしゃるんですか?

EK: それもね、最初は、これ面白そうやん、と言うところから始まってるんですけど。プラス、この地域の場合は、国立公園の96%は民有地なんですよ。日本の国立公園の平均が40%くらいが民有地なんですけど、日本の国立公園の中で、一番民有地が多いんですよ。で、国有の土地じゃないので、みんなの意識が酷かったら、すぐにぐちゃぐちゃになっちゃう、っていうのと、どこに行っても人の土地、ということがあったり。あと、漁業があるので、みんなが先に使ってる資源というところに、私たち入るということになるから、ひとと関わらないとできない土地というのがあって。私は、この人たちが自然を使って暮らしているから、人も自然の一部やし、この人たちを通して自然を見ることも、知ることもできるから、エコツーリズムやっていう理解をしてたんです。

地域振興型の鳥羽式エコツーリズムの必然性

でも、その時のエコツーリズムていうのは、日本に入ってきて10年経つか経たないかぐらいで、自然保護が主体だったんですね。知床だったり、屋久島やったり。みんなその自然資源でやってたので。何か、きくさんのところのは、エコツーリズムじゃないって、最初言われて。この辺のつまみ食いウォーキングていうの、街歩きやからエコツーリズムじゃない、とか。けど、この街に暮らしている人そのもの全部の後ろに自然があるから、仲買さんとか、問屋さんとか、お寿司屋さんにしても、そういうのが、その人たちから見えればいいなと思ったんで。

あの、エコツーリズムって、自然保護と、教育と、観光振興と地域振興と言う4つの柱になってるんらしいんです。でも、ほとんどが、自然保護に行くので。それは大事なことなんですけど、その保護のために、例えば、前のお土産屋さんからも、これのおかげで稼いでんのやから、ていうので、お金を取ったり、その場所に入るのに、観光客からもお金をとって。自然を守るためのお金をつくるってことを、すごくしてるけど、結局、地元の人たちにしてみたら、何かそのことで、貢献されてるっていう意識はないっていう。地域振興に、じゃあ本当になっているのかって言われたら、勝手にしてるだけ、というところもあったりとか。あとは、結局自分たちだけでは使いきれずに、外資のが入ってきてて。税金を落としてくれるんですけど、自分の国の資源なのに、自分の国民がそれを使って稼げてない、っていうところがあって。

で、もう、コミュニティーベースで、少しづつやろうよ、みたいな話になって。で、この鳥羽型のエコツーリズムをやりたい、コミュニティーでみんながやる、っていうやり方をやりたい、って言ってくれることになってて。ま、そういう、地域振興型のエコツーリズムっていうのが、まあ、日本がそういうことやりだしたのかな。何かすごい税金投入して守るっていうことも一つやと思うんですけど、やっぱり、日本の場合は、自然とすごい人が繋がってるので、使う人たちが、意識して守るとか、使い方を考えるのが、一番効率的やと思うんで、そのためには、やっぱり、地域振興かな。

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