第4回 フードスタディーズ分科会 「揚げ浜塩田:海と陸を結ぶ地方創生」
令和3年度第2回分科会
第4回分科会は、石川県珠洲市の伝統技法「揚げ浜式製塩法」による塩作り を主軸とした「“揚げ浜塩”主軸のエコデザイン」を設計し、積極的に里山里海を保全する取り組みを進めて来られた(株)Ante 代表取締役の中巳出理氏を講師にお迎えし、「揚げ浜塩田: 海と陸を結ぶ地方創生」と題し、議論を進めたいと考えています。
日時: 令和4年3月7日(月)14時~15時 (Zoom会議)
テーマ: 「揚げ浜塩田:海と陸を結ぶ地方創生」
講演者: 中巳出理 (なかみで りい:Nakamide)
株式会社Ante代表取締役
石川県の伝統文化・歴史・農産物等の地域資源を生かした商品開発
「しおカフェ」・塩田事業操業
司会挨拶(Akira)
今日は中巳出理さんをお招きして、「揚げ浜塩田、海と陸を結ぶ地方創生」というタイトルでお話をお願いしたいと思います。
中巳出さんは株式会社Anteの代表取締役で、石川県の地域資源を元にした様々な商品開発、販売をされています。その中でも一番特徴的なのは、石川県の珠洲市での伝統技法による揚浜式塩田法による塩作りを主軸としたエコデザインを創出され、積極的に里海里山の循環型、持続可能な社会のデザインのもと、会社運営、地域活性化に貢献されています。では、講演をお願いいたします。
講演
Nakamide
田中愛子先生のフードスタディーズのご縁で、愛子先生にも能登にお越しいただきました。私どもは、地域資源を生かした商品の企画開発をし、地域に貢献しようと言うことで株式会社Anteの代表をやらせていただいております。
そして一番の主軸は、海と陸を結ぶ地方創生という揚浜式塩田を営んでおります。
日本の塩作りには、大きく分けて入浜式製塩法というやり方と揚浜式製塩法と平釜等々とあります。
瀬戸内海みたいな干潮満潮の差が激しいところは入浜、満潮の時にどーっと浜に海水が上がってくるのを生かした塩作りが入浜式製塩法と言います。
私ども能登半島では満潮干潮の差が30cmほどしかないので、海水を組み上げるというやり方から揚浜式製塩法という手法で塩作りをやっています。
これは、入浜の塩作りからしたら大体7倍の労力がかかると言われ、太陽と人と、そして浜と、まさに自然と融合した塩作りでございまして、500年続いている伝統的な塩作りでございます。
私どもは里山と里海の資源を生かし、そして里山のカーボンニュートラルに取り組み、海ではマイクロプラスチック除去に取り組み、海を守り、山を守り、そして安心安全な美味しい塩作りをしてエコサイクルの塩作りをいたしております。
能登の海というのは大変透明度が高くて非常に美しい。そして沖合は干潮満潮が交差するところになってミネラルバランスが大変いいと言われております。そして山と海が隣接しておりますので、大きい川もなく生活汚濁がなく、山のミネラル、フルボサン等を含んだのが海に流れ込んで大変ピュアな美しい海と言われております。
ただ、昨今どこの海も海洋プラスチック、マイクロプラスチックが大変な大きな問題になっております。
2017年に世界を震撼させたのですけれども、東南アジアの塩、日本は除いて、海水で組み上げた塩の中にはマイクロプラスチックが97%含まれているというデータが出たのですけれども、
私どもはそれ以前からそれを危惧して、海水を全て1ミクロンと5ミクロンのフィルターに4回通して、それを塩田に撒いております。
そしてもう一つの問題として、今カーボンニュートラルということで、地球温暖化が大変な問題になっておりますが、私どもは化石燃料とか、それから建築廃材等はいっさい使っておりません。化石燃料はCO2を増すということで、建設廃材は燃やすことによって色んなダイオキシン等の問題が起きておりますので、私どもは全て里山から切り出したコナラの木を薪として使っております。
日本の塩作りというのは、まず浜で海水の塩分濃度を上げるということと、そして、炊き上げるという二つの工程に別れるのですが、この炊き上げる際の燃料というのは化石燃料を使わず、建築端材も使わず、そして山から切り出してきたコナラの木というのを使って、これは更新伐採と言って、山の木と言うのは、コナラの木は、広葉樹ですが、
コナラの木というのは直径20cm以上大きくなると倒木してなだれを起こしてしまいます。昔の先人の古代の人たちというのは、山で薪をとって、そしてそれを燃料としていたために、更新伐採とうまく循環していたのですね。木を切ることによって、コナラの木は切れば横から萌芽するので、これを更新伐採と言うのですが、私どもは更新伐採、山を再生すると言うことで、コナラの木を山から切り出したものを燃料として使って、実質上、地球上のCO2の濃度を上げない、カーボンニュートラルという考え方で燃料を焚いて、そして山を守って行こうという山を再生する運動にもつなげていきたいと思っております。
要するに海と山を生かし、山の幸を生かし、海の恵みを生かしたエコな塩作りを目指しております。
塩を作るということがエコデザインなのですけれども、
主軸の揚げ浜というのはまず、里山の木を切り出して山を再生するというサイクルがあって、塩作りがあって、そして塩作りの中でも、能登半島の景観、外浦の方は100件以上の塩田があったのですけれども、塩田の景観を守る、再生したいという思いと、そしてそれによって塩による商品開発を拡大して行くと。そして知名度を上げて、能登というところを知っていただいて、そして塩を巡礼みたいなことに起用していきたいと。そしてまたそれを発信する拠点として観光にも取り組んでいきたいというふうに思っております。
それから、特産物。塩作りによって出るのは、ニガリというのが一番先に出てくるのですけれども、海水を煮詰めるときに一番最初にNaCl塩化ナトリウムが結晶化するのですけれども、その他のミネラルを含んだニガリ、混ざりというか汚液が出てきます。そのニガリも商品として使っていきたいと商品開発に取り組んでおります。
そして、燃料を燃やした際にできる灰は、以前はみなさん、土壌改良にお使いになったのですが、今はもうほとんど化学肥料でやっておりますが、これを里に返して、そして里の循環につなげていきたいというふうに、揚げ浜塩を主軸としたエコデザインを思っております。
じゃあ未来につなげるために、非常に過酷な労働で太陽と海と自然と人だけで作る商品なので、これをじゃあ商品化してビジネスとしてやる時には、もう塩を作るだけでは大変でございますので、その塩を生かした商品開発、色んな商品を開発してそしてそれに付加価値をつけてみなさんに提供したいというふうに思っております。
それで色んな商品開発、色んな物を商品化のようにして商品開発を致しております。揚げ浜式製塩法の塩を使った商品を開発した皆さんに提供したいというふうに思っております。
そして観光としては、塩カフェという塩街道に日本海を望むところにカフェを、そして塩を主軸とした、
ドリンクであったり、2階は塩のコーナーになっております。塩とか色んな作り方とかそういうものを展示するようになっておりまして、メニューとしては塩を生かしたメニューを提供しております。
そして学生たちとか若者と一緒に毎年海岸清掃などに取り組んでいます。
そしてこれであがった塩のサイダーの売上の一部を珠洲里山里海応援基金に寄付させていただいて、里山里海の保全に寄与していただきたいと思って寄付させていただいております。これは2009年より12回続いております。
私ども、限りある塩を、その塩を軸にして、これが軸になって、それに加工品を作り、業務用の塩を作ったり調味料にしたり、コスメと言うのはニガリを生かしたマグネシウムを生かした入浴剤等を使ったり、観光に使ったりして、塩から生まれるものを全て使って、ビジネスとして、そして貢献していきたいと言うふうに思っています。以上です。
中巳出 理氏
1947年石川県加賀市に生まれる。
生け花作家・現代彫刻家としての活躍を経て、石川県の伝統文化・歴史・農産物等の地域資源を生かした商品開発を行い、地域活性化につなげたいと2009年株式会社Anteを起業。
地域資源を使った数々の商品を開発するとともに2014年「しおカフェ」をオープン。
2016年揚げ浜塩田事業に着工、2017年より塩田事業操業開始する。
➢放映
テレビ金沢・ドキュメンタリーテレビ番組「過疎起業人でございます。」(2015年 6月)
テレビ大阪・「夢職人」(2015年8月)
日テレ・ニュースエブリー「女社長のど根性物語」(2015年12月)
➢受賞等
革新的ベンチャービジネスコンテストいしかわ・優秀企業家賞(2011年 10月)
中小企業庁「はばたく中小企業・小規模事業者300」に選定(2016年5月)
しおサイダー モンドセレクション3年連続金賞受賞(2014~2016年)