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【トレンド・ウォッチ】訪れるほどに、その土地が輝き出すー次世代の旅「リジェネラティブ・ツーリズム」が描く未来

「観光客が増えすぎて、地域住民が生活環境の悪化に困惑している」「オーバーツーリズムは、避けて通れない地方の宿命なのだろうか」。日本をはじめ、世界各地の観光地からこうした葛藤の声が上がるなか、今、世界の観光業界が次なる解決策として注目しているのが「リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)」という新しい潮流です。

旅は、ただ美しい風景を眺め、文化に触れるだけの体験でしょうか。 リジェネラティブ・ツーリズムは、その問いに新しい答えを提示します。それは、旅人が訪れることで、その土地が来る前よりも豊かに、より元気になるような「能動的な関わり」を持つ観光のあり方です。

この新しい旅の形は、ニュージーランドやハワイといった観光先進国から、世界の一流ホテル、そして日本の地方へと、急速に広がりを見せています。

 

写真はイメージです

 

「地域と共に未来を創る」という新しい旅の視点

リジェネラティブ・ツーリズムの核にあるのは、旅行者が単なる訪問者ではなく、その土地の「協力者」や「パートナー」となるという考え方です。

これまで、旅先での体験は「何が得られるか(体験、思い出、癒やし)」という自分本位の視点が中心でした。しかし、これからの旅は「自分がその土地に何をもたらせるか」という視点が加わることで、さらに深く豊かなものへと進化します。

訪れる人がその土地の文化や自然を尊重し、時には能動的にケアに参加する。その結果として、地域が潤い、自然が守られ、そこに暮らす人々の幸福度が向上する。そんなポジティブな連鎖を生み出すことが、再生型観光の真髄です。

 

世界で起きている「再生型観光」の最前線

 

1.国家レベルの導入:ニュージーランド・ハワイ

もっとも先進的なグランドデザインを描いているのが、ニュージーランドやハワイの観光政策です。

ニュージーランドでは、旅行者に自然や文化への敬意を持って行動することを呼びかける「ティアキ・プロミス(Tiaki Promise)」を国家的に展開。政府や観光業界が連携し、旅行者自身が自然環境や地域社会を守る「旅の担い手」となることを促しています。また、観光が地域経済や自然環境、住民生活へ与える影響を継続的に把握し、持続可能な観光政策へ反映する仕組みづくりも進めています。

一方、ハワイでは「マラマ・ハワイ(Mālama Hawaiʻi=ハワイを思いやる心)」を掲げ、海岸の清掃活動や伝統的な農地の再生などのボランティアを旅行プログラムに組み込んでいます。こうした活動は特別なイベントではなく「旅の選択肢」の一つとして提供されており、地域に貢献すること自体が旅の満足度を高める体験として、多くの旅行者に受け入れられています。

 

2.高級ホテルチェーンの参入:アマン、シックスセンシズ

世界の富裕層が泊まる超一流ホテルグループも、運営の根幹に「地域再生」を据えています。 例えば「アマン」がカンボジアで展開する施設では、かつて荒れ地だった場所を買い取り、数年かけて数千本の在来種を植林して、美しい森へと丸ごと再生させました。

また、「シックスセンシズ」では、宿泊費の一部が自動的に地域の再生基金へ回るビジネスモデルを確立しています。モルディブのリゾートでは、この仕組みによって広大な海洋保護区が誕生し、絶滅危惧種の保護や生態系の回復が着々と進んでいます。ラグジュアリーな滞在が、そのまま現地の生態系を回復させ、次世代へ豊かな自然を残す原動力となっているのです。

 

日本国内における「再生型観光」の胎動

日本国内でも、その土地の誇りと魅力を守り、育むアプローチが芽吹き始めています。

豊かな水循環と美しい風景で知られる富山県砺波(となみ)平野では、伝統的古民家「アズマダチ」の維持や屋敷林(カイニョ)の保全活動を滞在プログラムに導入。観光客が自らの手で地域の伝統的な景観を「守り、育てる」という深く本質的な体験を提供しています。

また、北海道や沖縄の離島などにおいても、入域税や体験プログラムの収益を、サンゴ礁の再生や野生動物の保護基金に直結させる仕組みが構築されつつあります。環境保全を地域住民やボランティアだけに頼るのではなく、旅を通じて訪れる人々が経済的な循環の一部を担う試みは、持続可能な未来への大きな一歩です。

 

今回のテーマに関連するSDGsの17の目標

リジェネラティブ・ツーリズムは、SDGsの達成を力強く後押しします。

目標8:働きがいも経済成長も 地域独自の体験プログラムが観光収益となり、現地産業を直接買い支えることで、経済の好循環と安定した雇用を生み出します。

目標12:つくる責任 つかう責任 地産地消や資源循環を促す滞在スタイルにより、地域内で資源が回る「サーキュラーエコノミー」の実現に寄与します。

目標14:海の豊かさを守ろう 旅の収益が海洋生態系の積極的な再生や保護へと投資されます。

目標15:陸の豊かさも守ろう 生物多様性を高める取り組みを通じて、その土地本来の豊かな自然を取り戻す「ネイチャーポジティブ」を促進します。

 

地域と旅行者が結ぶ、新しい関係性の形

リジェネラティブ・ツーリズムが今、世界の観光ビジネスの現場で注目されているのは、これが単なる理念にとどまらず、地域課題を解決するための実践的なアプローチだからです。

旅行者を「その場限りの観光客」として扱うのではなく、「離れていても、その土地の自然や文化を一緒に守っていく仲間」として迎える。そうすることで、観光地と旅人の間に、これまでにない温かい繋がりが生まれます。

観光の経済的恩恵を受け止めながら、同時に自然やコミュニティへの負荷をケアしていく仕組みを整える。こうした取り組みが日本各地で広がっていけば、オーバーツーリズムの歪みを緩和し、地域の持続可能性を高める有効な選択肢となるはずです。

旅先を選ぶとき、その土地の環境や暮らしに自分がどうコミットできるか。そうした視点を持つことが、これからの時代の、旅の新しいスタンダードとして定着し始めています。

参考・引用

 

 

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【トレンド・ウォッチ】「洗う」を問い直す―毎日の洗濯が地球とつながっている

https://japan-sdgs.or.jp/news/6723.html

 

熊問題と現代型レンジャー (I)熊問題

https://japan-sdgs.or.jp/news/6559.html

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