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【トレンド・ウォッチ】なぜ煙は国境を越えるのか?―東南アジアを覆うヘイズ、被害は3か国以上に

シンガポールの高層ビル群が煙にかすみ、マレーシアでは複数の州で学校が休校になる。東ティモールも、全国の学校を3日間閉鎖すると発表しました。2026年10月、東南アジアで深刻化しているのが「ヘイズ(haze:煙やもやで空がかすむ現象)」と呼ばれる大気汚染です。原因は、インドネシアで続く森林や泥炭地の火災。煙は国境を越え、周辺国の暮らしと健康に影響を及ぼしています。

 

シンガポールで今年最高の大気汚染を記録

シンガポールの英字紙『The Straits Times』によると、シンガポールでは10年以上で最悪とされる越境ヘイズが発生しました。 マレーシアでも複数の州で学校が休校になりました(※1、※2)。

PM2.5は非常に小さな粒子で、肺の奥まで入り込む可能性があります。呼吸器や循環器への影響が心配されるうえ、視界が悪くなって日常生活にも支障が出ます。また、ヘイズに関連する症状を訴える患者の増加や、航空便への影響も報告されています(※1)。

 

なぜインドネシアの火災が隣国を襲うのか

煙のもとは、インドネシアのスマトラ島やボルネオ島(カリマンタン)で続く森林・泥炭地の火災です。この地域では毎年、乾季に火災が起きます。今年はエルニーニョに伴う干ばつの影響で、火災が例年より激しくなっています。煙は風に乗って、シンガポールやマレーシア、東ティモールなどに広がりました(※2)。
厄介なのが泥炭地の火災です。泥炭地は、枯れた植物が十分に分解されないまま積み重なった湿地です。乾燥すると地下でもゆっくり燃え続け、消えたように見えても再び燃え出すことがあります。インドネシアの防災当局も、こうした火災の消火に苦戦していると説明しています。
背景には、焼畑や土地の開墾が、もともと燃えにくかった景観を変えてきたとの専門家の指摘もあります(※2)。

 

国境を越える環境問題をどう解決するか

ヘイズ対策が難しいのは、火災が起きている国と、被害を受ける国が違うことです。火災を防ぎ、消すには、発生源の地域での取り組みが欠かせません。しかし被害は周辺国の健康や経済活動にも及ぶため、一国だけでは解決できません。
シンガポール政府は2026年10月16日、インドネシアでの火災に関連して、7社に越境ヘイズ汚染法に基づく予防措置通知を出しました。さらに19日、カリマンタンの3社にも通知を出すと発表し、対象は計10社になりました。各社には、消火や野焼きの停止、再発防止計画の提出などが求められます。ただし、通知は企業の法的責任を確定するものではありません(※3)。

ASEAN(東南アジア諸国連合)でも協議が予定されており、11月には外相級の会合で議題となる見通しです。火災を消すだけでなく、森林や泥炭地の保全、土地開発の管理、企業の責任、国同士の協力を組み合わせた対策が必要です。
ヘイズは、ある国の森林火災が、国境を越えて別の国の空気や健康を脅かす問題です。煙が国境を越える以上、対策も国境を越えて進めなければなりません。

また、ヘイズは、人の健康だけでなく、森林や泥炭地などの自然環境にも関わる問題です。人、動物、環境の健康は相互につながっているという「ワンヘルス」の考え方からも、森林火災の予防や生態系の保全、大気汚染による健康被害への対応を一体的に進めることが重要です。また、煙は国境を越えて広がるため、被害を受ける国と火災が発生する国が協力して対策を進める必要があります。

 

参考・引用

※1 The Straits Times(2026年10月18日)
https://sg.news.yahoo.com/cloaked-grey-causes-effects-haze-210000222.html

※2 AFP(2026年10月14日) https://cambodianess.com/article/indonesia-haze-spikes-singapore-pollution-shuts-east-timor-schools

※3 Associated Press(2026年10月19日) https://apnews.com/article/singapore-indonesian-companies-haze-preventive-notices-fires-490015d018d9c53619aa9e2ccdb61811

 

 

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