2026年8月14日、WHO(世界保健機関)、FAO(国連食糧農業機関)、世界動物保健機関、国連環境計画の4国際機関は、これまで2026年までとされていたワンヘルス共同実施計画を2029年まで延長すると発表しました。各国が共通の枠組みのもとで計画を立て、実践を継続し、取り組みを広げられるようにするためです。発表ではさらに、各国におけるワンヘルスの継続的な取り組みが、2030アジェンダに基づく持続可能な開発目標〈SDGs〉の達成にも引き続き貢献すると述べています。【参照1】
現在、福岡県内でワンヘルス事業の見直しが報じられているのとほぼ同じ時期に、国際社会では、ワンヘルスをさらに継続し、発展させる方針が確認されました。
世界の動きと福岡の現状との対照は、ワンヘルスを地域内の政治的な話題だけで理解することの危うさに警鐘を鳴らしています。

《世界中で、ワンヘルス。》 画像:SDGs JAPAN PORTAL 編集部
福岡県政をめぐる報道のなかで、見失われているもの
最近、福岡県政をめぐる報道のなかで、「ワンヘルス」という言葉が繰り返し取り上げられています。
報道では、県の事業費や施設整備、県議会関係者の活動などが論じられ、ワンヘルスが特定の政治家のための事業や、特定地域だけで進められてきた構想であるかのような印象を与える場面もあります。【参照2】
公的な事業の適切性や説明責任を検証すること自体は必要です。しかし、そこで語られる個別の問題と、ワンヘルスという取り組みそのものとは、本来、別のものです。
ワンヘルスは、一人の政治家が生み出した政策でも、一つの自治体が独自に掲げた宣伝文句でもありません。
人の健康、動物の健康、自然環境の健全性は互いにつながっている。この現実を踏まえ、感染症、薬剤耐性、食品の安全、生態系の保全などの課題に、分野や国境を越えて取り組むために育てられてきた、世界的な共同実践です。
私たちが食事をするとき、ペットと暮らすとき、病院で治療を受けるとき、感染症の流行に備えるとき。その背後には、人の医療、動物の医療、公衆衛生、食品衛生、環境保全など、さまざまな分野の連携があります。
その連携を強化し、実際に機能させるための考え方が、ワンヘルスです。
SDGs JAPANポータルは、先に公開した記事で、福岡県政をめぐる混乱のなかでワンヘルスの理念や実践まで否定してよいのかという問題を提起しました。【参照3】
今回はさらに踏み込み、ワンヘルスがどのような必要性から生まれ、国際社会で発展し、日本と福岡県で具体化してきたのか明らかにするため、具体的な歴史背景を整理します。
そのうえで、藏内勇夫氏が日本獣医師会、アジア獣医師会連合、世界獣医師会などで担ってきた役割を、時系列に沿って位置づけます。
目的は、特定の人物を無条件に擁護することではありません。
ワンヘルスが何を守るための取り組みなのか。そして、その実践がどのような人々の協力によって形づくられてきたのかを、事実に基づいて、普通に真っ直ぐ見直すことです。
背景:なぜ人の健康だけを見ていては、人を守れないのか
人間は、自然環境や動物から切り離されて生きているわけではありません。
日々の食事は農業、畜産、水産業に支えられ、飲み水は河川や森林などの環境とつながっています。家庭には犬や猫などの動物が暮らし、農地や住宅地の周辺には野生動物がいます。
こうしたつながりは、豊かな暮らしを支える一方で、感染症や環境悪化などの影響が、人と動物の間や地域の外へ広がる経路にもなります。
世界動物保健機関は、人に病気を引き起こす病原体の約6割が家畜または野生動物に由来し、人に新たに現れる感染症の約7割5分が動物由来だと説明しています。【参照4】
新型コロナウイルス感染症、鳥インフルエンザ、狂犬病、重症熱性血小板減少症候群などを考えれば、感染症対策を人間の医療だけで完結させることが難しい理由は明らかです。
なお、新型コロナウイルスの起源や人への伝播経路には、なお解明すべき点があります。しかし、動物・人・環境をまたぐ感染症への監視と対策が必要であること自体は、その問題とは別に確認されています。
同じことは、抗菌薬が効きにくくなる薬剤耐性の問題にも当てはまります。
病院で抗菌薬を適切に使うだけでは十分ではありません。家畜やペットへの使用、食品を通じた影響、環境中での耐性菌の広がりなども併せて把握する必要があります。
農林水産省は、動物由来の薬剤耐性菌を調べる全国的な監視体制を1999年から運用しています。これは、人間の医療における監視と組み合わせることで、より現実的な感染症対策につながります。【参照5】
つまり、ワンヘルスとは、既存の医療や獣医療を否定して新たな仕組みに置き換えることではありません。
すでに存在する活動を、人、動物、環境のつながりに即して結び直し、互いに情報を共有し、実際の被害を防ぐ力を高める取り組みです。
その意味で、ワンヘルスは抽象的な理念というより、私たちの暮らしを支える連携の方法といえます。
Part I ワンヘルスの歴史
ニュース1:ワンヘルスは世界が必要に迫られて形成した共同実践
ワンヘルスは、ある時点で突然つくられた標語ではありません。
感染症の国際的な拡大、野生動物と人間の接触の変化、食品供給の広域化、環境破壊、気候変動などに対応するなかで、必要に迫られて発展してきました。
まず、その歴史を整理します。
表1 ワンヘルスの国際的な形成と発展

出典:【参照6】【参照7】【参照8】【参照9】【参照10】【参照11】【参照12】【参照13】【参照1】
この年表から分かるのは、ワンヘルスが、国際会議の場で唱えられただけの理念ではないということです。
2004年のマンハッタン原則は、人間、動物、自然環境を別々の問題として扱うことの限界を示しました。そして、人、家畜、野生動物、生態系の健康を一体として捉える必要性が、「ワンワールド・ワンヘルス」に関する12の提言によって、国際的な原則として整理され提示されました。
2008年の国際機関の共同戦略は、「ワンワールド・ワンヘルス」を感染症対策の具体的な政策課題へつなげました。
2012年の世界医師会と世界獣医師会の覚書は、医師と獣医師の連携を実現することによって、誰が現場で協力するのかを明確にしました。
2016年の福岡宣言は、その医師と獣医師の協力を実践へ進める意思を、4つの宣言として世界に示しました。
そして2022年以降は、保健、食料・農業、動物衛生、環境を担う4つの国際機関が共同で、各国の取り組みを強力に支える段階に入っています。
さらに2026年8月には、共同実施計画を2029年まで延長する方針が示されました。【参照1】
世界は、ワンヘルスを終わらせる方向ではなく、実践を継続し、各国の社会にさらに根づかせる方向へ進んでいます。
ニュース2:日本と福岡県で、理念はどのように現場の連携へ変わったのか
国際的な理念は、それだけでは人を守れません。
感染症の兆候に気づく人がいて、動物の状態を確認する人がいて、情報を共有する仕組みがあって、必要なときに行政や医療機関が連携できて初めて、実際の備えになります。
日本では、その具体化の重要な出発点となったのが、日本医師会と日本獣医師会の協力でした。
表2 日本・福岡県のワンヘルスの歩みと藏内勇夫氏の関与


出典:【参照5】【参照9】【参照10】【参照14】【参照15】【参照16】【参照17】【参照18】【参照19】【参照20】【参照21】【参照22】
この歴史を順番に見ると、ワンヘルスが特定個人の所有物だという理解が成り立たないことは明らかです。
国際的な理念の形成が先にあり、その後に世界医師会と世界獣医師会の協力が生まれ、日本医師会と日本獣医師会の協定が結ばれました。
さらに、福岡県で地方組織同士の協定が結ばれ、全国へ広がり、国際会議、自治体の条例、アジアとの連携へと発展していきました。
藏内氏は、その流れを一人でつくったのではありません。
しかし、日本獣医師会の代表者として医師会との協力を進め、国際会議で日本の経験を共有し、福岡とアジアの実践をつなげ、2026年には世界獣医師会の会長に就任したことは、各組織の公的な記録から確認できます。
功績を適切に評価するとは、その人物を無批判に持ち上げることではありません。
どの時点で、どの立場から、どのような連携に関わったのかを、確認できる事実に沿って整理することです。
ニュース3:医師と獣医師の連携は、具体的に何を変えたのか
「医師会と獣医師会の連携」と聞いても、それが自分の生活とどう関係するのか、すぐには分かりにくいかもしれません。
しかし、福岡県で行われた実際の取り組みを見ると、その意味は具体的です。
2016年の国際会議で、福岡県獣医師会の代表者は、福岡県獣医師会と福岡県医師会が2013年12月に地方組織として学術協定を締結したことを報告しました。
同じ会議で、福岡県医師会の関係者は、両会の共同事業として行われた「共通感染症発生状況等調査」の結果を紹介しています。
その報告では、身近なペットから人への感染が日常的に起こり得ること、乳幼児、高齢者、基礎疾患のある人、妊婦などは特に注意が必要であることが示されました。【参照10】
これは、医師と獣医師が一緒に写真を撮り、協定書に署名したというだけの話ではありません。
犬や猫に異変が起きたとき、動物病院は何を把握するのか。
人が発熱したとき、医療機関は生活環境や動物との接触をどこまで確認するのか。
地域で感染症の兆候が見つかったとき、どの専門職が、誰と、どのように情報を共有するのか。
そうした具体的な連携がなければ、人と動物の間で広がる病気の兆候を見落としかねません。
国立感染症研究所の報告でも、犬や猫などの動物に関わる重症熱性血小板減少症候群の事例が取り上げられています。動物の健康と人の健康が別々の問題ではないことは、現実の感染事例からも分かります。【参照23】
また、全国の地方獣医師会と地域医師会の協定は、特定の県や特定の人物のために存在するものではありません。
日本医師会による記録では、福岡県での協定を出発点の一つとして、55の地方獣医師会と各地域の医師会の連携へ広がったことが紹介されています。【参照10】
つまり、ワンヘルスを軽く扱うことは、聞き慣れない外来語を批判するだけでは済みません。
地域の医師と獣医師が積み重ねてきた感染症対策や情報共有の仕組みまで、見えなくしてしまうおそれがあります。
Part II 日本から世界へ
ニュース4:東日本大震災の経験が示したワンヘルスの現実
ワンヘルスというと、感染症対策だけの話だと思われがちです。
しかし、2015年のマドリード会議で日本から報告された内容は、もっと広いものでした。
日本医師会の公式報告によれば、会議は2015年5月21日と22日に開催され、22日のセッションで、当時の日本医師会会長・横倉義武氏と日本獣医師会会長・藏内勇夫氏が、それぞれ講演しました。
主題は、自然災害への備えと、医師・獣医師の連携でした。【参照9】
横倉氏は、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故への対応、地域の医療体制、動物由来感染症対策、食の安全などを紹介しました。
藏内氏は、日本獣医師会の記録で、被災動物の保護、傷病動物の治療、避難所や仮設住宅で暮らす人々への飼育相談、獣医師への支援、動物救護施設の運営などについて報告したと記しています。【参照15】
災害時には、人の命を救うことが最優先です。
しかし、避難する人のなかには、長年暮らしてきた動物を置いていけない人もいます。家畜の被害は農家の暮らしに直結し、食品や水の安全は避難生活全体に影響します。
被災者の生活を支えるには、人間だけを切り取って救うという発想では十分ではありません。
人と動物がどのように暮らしてきたか。地域の食料や水は安全か。環境の変化が健康にどのような影響を与えるか。
そうした関係全体を見ながら、医師、獣医師、行政、地域住民が連携する必要があります。
日本が国際会議で共有したのは、立派な理念ではなく、災害を経験した社会が直面した具体的な課題でした。
だからこそ、その後の福岡での国際会議につながったのです。
ニュース5:福岡宣言は何を前進させたのか
2016年11月10日と11日、北九州市で開催された第2回世界獣医師会・世界医師会ワンヘルス国際会議には、31カ国から639人が参加しました。
主催には、日本医師会、日本獣医師会、世界医師会、世界獣医師会が名を連ねました。
日本医師会は、この会議が、マドリード会議で紹介された日本の医師会と獣医師会の連携が評価されたことを受けて開かれたと説明しています。【参照10】
会議では、人獣共通感染症、薬剤耐性、地域における医師と獣医師の協力などについて議論され、「福岡宣言」が満場一致で承認されました。
その意義は、ワンヘルスを新しく発明したことではありません。
すでに国際社会で共有されていた考え方を、医師と獣医師が、地域や国を越えて、具体的に行動する段階へ進めたことです。
整理すれば、次のようになります。
マンハッタン原則は、何を一体として考えるべきかを示しました。
世界医師会と世界獣医師会の覚書は、誰が協力するのかを示しました。
福岡宣言は、その協力を実際の行動へ移す方向を明確にしました。
この連続性を踏まえれば、福岡宣言は一地域の宣伝ではなく、世界的な理念と専門職の現場をつなぐ節目の一つとして理解できます。
ニュース6:福岡県のワンヘルスは、感染症だけの政策ではない
2020年12月、福岡県は全国で初めて「福岡県ワンヘルス推進基本条例」を制定しました。
その背景には、2016年の福岡宣言と、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大がありました。
条例が掲げている基本方針は、次の6つです。【参照17】

これらは、県の施設やイベントだけを指すものではありません。
感染症に備えること。
薬が効かなくなる事態を防ぐこと。
子どもが自然と触れ合える環境を守ること。
安心して食事ができること。
動物と暮らす人が地域社会のなかで安全に生活できること。
いずれも、特別な思想ではなく、生活上の具体的な課題です。
個別の事業に改善すべき点があれば、その事業を検討する必要があります。しかし、事業への疑問と、感染症対策や薬剤耐性対策の必要性とは、区別しなければなりません。
制度を見直すことと、生活を支える連携を失うことは、同じではありません。
ニュース7:福岡からアジアへ、そして世界へ
2022年11月、福岡市でアジア獣医師会連合の大会が開催されました。
日本での開催は27年ぶりで、11月13日に「アジアワンヘルス福岡宣言2022」が採択されました。
当時、アジア獣医師会連合の会長を務めていた藏内氏は、福岡からアジア、そして世界へ取り組みを広げる方針を示しました。【参照19】
宣言は、人獣共通感染症や薬剤耐性の問題だけでなく、生物多様性、環境保全、獣医学教育、医療関係団体や行政との連携、子どもや市民への普及などを扱っています。
ここでの広がりは重要です。
医師と獣医師だけで完結する取り組みではなく、環境分野、教育機関、自治体、市民団体、地域住民が関わる社会的な実践へ進んでいるからです。
2024年には、福岡県とタイの首都バンコクを管轄するバンコク都が、ワンヘルスの推進に関する基本合意書に署名しました。
福岡県によれば、将来のパンデミックへの備えや、人材育成、普及啓発などについて、地域を越えた協力を進めることが目的です。【参照21】
感染症も、耐性菌も、環境問題も、行政区域の境界では止まりません。
一つの県だけで対策を完結させることはできず、日本国内だけを守れば十分というわけでもありません。
アジアとの連携は、国際交流を行うこと自体を目的とするものではなく、人や動物が移動する現実のなかで、互いの暮らしを守るための実務でもあります。
さらに2026年4月、東京で開催された世界獣医師会大会で、藏内氏は日本人として初めて世界獣医師会の会長に就任しました。
福岡県は、その事実を公式に公表しています。【参照22】
この経緯を整理すると、次のような流れが見えてきます。
国際理念の形成 → 世界の医師会・獣医師会の協力 → 日本の医師会・獣医師会の協定 → 福岡での地域実践 → 全国への展開 → 福岡宣言 → アジアでの協力 → 世界獣医師会での活動
藏内氏の役割は、この流れのいくつもの接点に、獣医師会の代表者として継続的に関わったことにあります。
ワンヘルスを発明した人物ということではありません。
国際的な理念を、医師と獣医師の連携、地域の実践、アジアでの協力へつなぐ過程で、中心的な役割を担った人物の一人だということです。
ニュース8:国際スポーツ大会も、暮らしに近いワンヘルスの実践の場になる
ワンヘルスやSDGsは、行政文書や国際会議のなかだけに存在するものではありません。
学校、地域活動、企業の取り組み、農業、医療、スポーツなど、私たちが実際に生活する場で具体化されて初めて意味を持ちます。
その一つが、北九州市で開催されたVNL2024福岡大会など、国際スポーツ大会におけるSDGsの実践です。スポーツが持続可能な開発を進める重要な手段であることは、SDGsを掲げた「2030アジェンダ」第37項に明記されています。【参照24】また、VNL2024福岡大会については、国際バレーボール連盟〈FIVB〉のファビオ・アゼベド氏〈当時事務総長、現会長〉が、福岡県のワンヘルスへの取り組みが開催地決定の重要な理由の一つだったと説明しています。【参照25】
SDGs JAPANポータルは、VNL2024福岡大会について、会場の立地や構造を活用し、環境への配慮、地域との協力、子どもたちの学びなどを結びつける取り組みが進められたことを紹介してきました。【参照20】
大規模なスポーツ大会では、多くの人が移動し、食事をし、施設を利用します。
大会を通じて、環境への負荷を減らすことも、地域の人々と交流することも、子どもたちに健康や自然との関係を考える機会をつくることもできます。
そこにワンヘルスの視点が加わることによって、人の健康、動物との共生、自然環境、水や食の問題が、スポーツという身近な経験とつながります。
重要なのは、「SDGs」や「ワンヘルス」という言葉を会場に掲げることではありません。
地域の暮らし、子どもたちの経験、環境との関係が、実際に少しでも良い方向へ変わることです。
こうした活動は、特定の政治家のために存在するものではありません。
大会関係者、自治体、企業、学校、地域住民、子どもたちなど、多くの人がそれぞれの立場から関わることで成立します。
ワンヘルスを特定人物の所有物であるかのように語ることは、こうした人々の具体的な活動まで、ひとまとめに誤解させるおそれがあります。
世界動物保健機関は2026年、福岡県のワンヘルスの取り組みを、国際的な共同実施計画を地域レベルで具体化した事例として紹介しています。【参照26】
トレンド:世界は「理念の説明」から「生活を守る実践」へ進んでいる
一連の出来事をまとめると、ワンヘルスをめぐる世界の動きには、明確な方向があります。
第一に、感染症対策は、人の医療だけでなく、動物、食品、環境を含む連携へ広がっています。
第二に、国際機関の合意だけでなく、医師会、獣医師会、自治体、研究機関、地域住民が参加する実践へ進んでいます。
第三に、その対象は感染症だけにとどまらず、薬剤耐性、災害対応、食品安全、生物多様性、子どもの教育、地域の健康へ広がっています。
第四に、国際社会はこの取り組みを終わらせるのではなく、2029年まで共同実施計画を延長し、継続的な制度と活動として育てようとしています。【参照1】
一方、これまでワンヘルスに関して国際社会と共に歩み、さらにはそれを先導してきた日本では、最近の報道に見られるように、「ワンヘルス」や「SDGs」という言葉を聞いただけで、内容を確かめる前に、上から押しつけられた標語、きれいごと、特定の人々の利益のための仕組みと受け止める傾向も見られます。
もちろん、どのような理念であっても、その名前が付いていれば自動的に正当化されるわけではありません。
しかし、言葉への違和感や特定の人物への反感だけで中身を見なくなれば、感染症への備えや、薬剤耐性への対策や、自然環境の保全まで軽く扱われかねません。
その結果として不利益を受けるのは、国際機関でも、政治家でもありません。
病気にかかる可能性のある人、薬が効かなくなるかもしれない患者、安心して遊べる環境を失う子ども、安全な食料や水を必要とする私たち自身です。
ワンヘルスの価値は、その名前の立派さにあるのではありません。
人と動物と自然環境が実際につながっているという現実を踏まえ、被害が起きる前に協力できるかどうかにあります。ワンヘルスがSDGs実現のために果たす重要な役割は、2026年8月のWHO、FAO、世界動物保健機関、国連環境計画によるワンヘルス共同実施計画延長の発表でも明確に言及されています。【参照1】
世界のトレンドは、権威ある標語を増やすことではありません。
つながっている現実に合わせて、社会の側も連携できるようにすることです。
まとめ
ワンヘルスは、誰かの持ち物ではありません。
医師が人を診て、獣医師が動物を診て、研究者が感染症を調べ、行政が情報を共有し、地域の人々が自然環境を守る。
その一つひとつの働きが結びつくことで、私たちの暮らしは支えられています。
ワンヘルスという言葉を知らなくても、その恩恵を受けている人は少なくありません。
だからこそ、特定の人物や個別の事業をめぐる議論によって、長い時間をかけて築かれてきた連携の意味まで見失ってはならないのです。
【参照】
【参照1】WHO「Quadripartite collaboration extends the One Health Joint Plan of Action to 2029」、2026年8月14日。ワンヘルス共同実施計画を2029年まで延長することに関する発表。
https://www.who.int/news/item/14-08-2026-quadripartite-collaboration-extends-the-one-health-joint-plan-of-action-to-2029?utm_source=chatgpt.com
【参照2】テレビ西日本・FNNプライムオンライン「蔵内議長のライフワーク“ワンヘルス”事業 知事『根底から見直す』一方で県が“ワンヘルスボンド”で100億円調達【福岡発】」、2026年8月21日。
https://www.fnn.jp/articles/-/1098742?utm_source=chatgpt.com
【参照3】SDGs JAPANポータル「福岡県が誇るべきワンヘルスまで否定してよいのか―福岡県政の混乱のなかで、いま守るべきもの」。
https://japan-sdgs.or.jp/news/6918.html?utm_source=chatgpt.com
【参照4】世界動物保健機関「One Health」。人に病気を引き起こす病原体の約60%、新興感染症の約75%が動物に由来することについて。
https://www.woah.org/en/what-we-do/global-initiatives/one-health/?utm_source=chatgpt.com
【参照5】農林水産省「薬剤耐性菌のモニタリング」。1999年から続く動物由来薬剤耐性菌モニタリングについて。
https://www.maff.go.jp/nval/yakuzai/yakuzai_p3.html?utm_source=chatgpt.com
【参照6】野生生物保全協会「The Manhattan Principles」。2004年のマンハッタン原則。
https://oneworldonehealth.wcs.org/about-us/mission/the-manhattan-principles.aspx?utm_source=chatgpt.com
【参照7】FAOなど「Contributing to One World, One Health」。2008年の国際的な戦略枠組み。
https://www.fao.org/4/aj137e/aj137e00.htm?utm_source=chatgpt.com
【参照8】世界医師会「One Health Initiative: WMA and WVA」。世界医師会と世界獣医師会の協力覚書について。
https://www.wma.net/blog-post/one-health-initiative-wma-and-wva/?utm_source=chatgpt.com
【参照9】日本医師会「世界獣医学協会・世界医師会共催『One Healthに関する国際会議』出席〈報告〉」、2015年6月2日。会議開催日は2015年5月21~22日。
https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20150602_2.pdf?utm_source=chatgpt.com
【参照10】日本医師会「『福岡宣言』を満場一致で承認」。2016年の国際会議、福岡県の医師会・獣医師会の連携、地域における感染症調査について。
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/004793.html?utm_source=chatgpt.com
【参照11】野生生物保全協会「The 2019 Berlin Principles on One Health」。2019年のベルリン原則。
https://oneworldonehealth.wcs.org/about-us/mission/the-2019-berlin-principles-on-one-health.aspx?utm_source=chatgpt.com
【参照12】WHO、FAO、世界動物保健機関、国連環境計画「One Health Joint Plan of Action, 2022–2026」。
https://www.who.int/publications/i/item/9789240059139?utm_source=chatgpt.com
【参照13】WHO「World Health Assembly adopts historic Pandemic Agreement to make the world more equitable and safer from future pandemics」、2025年5月20日。
https://www.who.int/news/item/20-05-2025-world-health-assembly-adopts-historic-pandemic-agreement-to-make-the-world-more-equitable-and-safer-from-future-pandemics?utm_source=chatgpt.com
【参照14】日本獣医師会「公益社団法人日本医師会と公益社団法人日本獣医師会の学術協力の推進に関する協定の締結について」。
https://jvma-vet.jp/topics/topic_view.php?rid=1281&utm_source=chatgpt.com
【参照15】日本獣医師会・藏内勇夫「会長短信『春夏秋冬〈23〉』」、2015年6月19日。マドリード会議での講演内容と2013年11月20日の協定締結について。
https://jvma-vet.jp/about/aisatsu/log23.html?utm_source=chatgpt.com
【参照16】日本医師会「日本獣医師会から医療用等マスクの寄贈」。2020年の日医・日獣共同声明と全国的な連携体制について。
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/009360.html?utm_source=chatgpt.com
【参照17】福岡県「6つの基本方針」。福岡県ワンヘルス推進基本条例の制定経緯と6つの政策分野について。
https://onehealth.pref.fukuoka.lg.jp/about-one-health/basic-policies/?utm_source=chatgpt.com
【参照18】福岡県議会「福岡県“One Health”国際フォーラム2022+FAVA」。2020年の基本条例と2022年10月の実践促進に関する条例について。
https://www.gikai.pref.fukuoka.lg.jp/site/topics/gaiyou041112.html?utm_source=chatgpt.com
【参照19】福岡県「第21回アジア獣医師会連合〈FAVA〉大会が開催されました」。アジアワンヘルス福岡宣言2022について。
https://onehealth.pref.fukuoka.lg.jp/news/detail/41d15fea-fd4b-45f9-b7a2-09a5723f3ad8?utm_source=chatgpt.com
【参照20】SDGs JAPANポータル「<スポーツとSDGs> VNL2024福岡大会の意義Ⅱ.大会会場の構造とSDGs」。
SDGs JAPANポータルの記事
【参照21】福岡県「『福岡県・バンコク都友好促進訪問団』によるタイ訪問」。ワンヘルス推進に関する福岡県とバンコク都の基本合意について。
https://japan-sdgs.or.jp/news/5768.html?utm_source=chatgpt.com
【参照22】福岡県「藏内勇夫氏が日本人初となる世界獣医師会会長の就任報告のため知事を訪問されました」。
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/site/chiji-ugoki/wvapresident-houkoku.html?utm_source=chatgpt.com
【参照23】国立感染症研究所「関東地方で初めて感染が確認された重症熱性血小板減少症候群」。犬や猫などの動物と人の感染症との関係について。
https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/sfts/sfts-iasrs/10449-497p02.html?utm_source=chatgpt.com
【参照24】国際連合「Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development」第37項。スポーツが持続可能な開発を進める重要な手段であることについて。
https://sdgs.un.org/2030agenda?utm_source=chatgpt.com
【参照25】文部科学省・JSPIN「国際競技連盟と福岡県との強力なパートナーシップによるSDGsと地域活性化の実現-バレーボールネーションズリーグ2024福岡大会【前編】」。開催地選定とワンヘルスの関係について。
https://jspin.mext.go.jp/column/cb/?utm_source=chatgpt.com
【参照26】世界動物保健機関「One Health in Action: Fukuoka Prefecture – Advancing One Health at the sub-national level in Japan」、2026年。
https://www.woah.org/app/uploads/2026/05/one-health-case-study-japan-v5.pdf?utm_source=chatgpt.com
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