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人と動物、そして地球の健康をつなぐ-獣医師が担う「ワンヘルス」とSDGs

2026年4月、世界の獣医師が東京に集まります。

世界最大級の獣医学の国際会議の一つである、第41回世界獣医師会大会(World Veterinary Association Congress 2026) が、4月21日から24日まで 東京国際フォーラム で開催されます。世界約70カ国・地域から約6,000人の獣医師や研究者が参加し、獣医学の最新の知見や国際的な課題について議論が行われる予定です。

今回の大会のテーマは、
「ワンヘルスで世界の獣医療が示す未来(One Health for a Better Tomorrow: Veterinary Medicine Holds the Key)」です。

人の健康、動物の健康、そして、環境の健康を一体として考える「ワンヘルス」は、現在、世界の公衆衛生や環境政策において重要なキーワードとなっています。そして、その理念の実現において重要な役割を担う専門職の一つが「獣医師」です。

 

 

獣医師の役割は「動物の医者」だけではありません

多くの人にとって、獣医師といえば動物病院でペットを診療する医師というイメージがあるかもしれません。しかし実際には、獣医師の仕事はそれだけではありません。

例えば、食の安全を守る仕事があります。食肉処理施設での検査や食品衛生の管理など、私たちが安全に肉や乳製品を食べることができる背景には、獣医師の専門知識が活用されています。また、家畜の健康管理や感染症対策も重要な役割です。家畜の疾病は農業や食料供給に大きな影響を与えるため、獣医師の仕事は食料安全保障とも深く関わっています。

さらに近年、特に注目されているのが「人獣共通感染症」への対応です。鳥インフルエンザや狂犬病など、多くの感染症は動物と人の関係の中で発生します。新興感染症の約60%は動物由来とされており、こうした感染症の監視や予防には医師と獣医師の連携が欠かせません。

このように獣医師は、動物の健康を守る専門家であると同時に、社会の安全と公衆衛生を支える専門職でもあるのです。

 

ワンヘルスという新しい健康概念

こうした背景から注目されているのが「ワンヘルス」という概念です。

ワンヘルスとは、人の健康、動物の健康、そして環境の健全性は互いに深く結びついているという考え方です。感染症対策、食品安全、食品安全などの課題は、一つの分野だけで解決することはできません。医療、獣医学、環境科学など、多くの分野が連携して取り組む必要があります。

この考え方は、近年のパンデミックを経験した世界において、ますます重要性を増しています。人間の活動が自然環境を変化させることで、野生動物と人間の接触機会が増え、新たな感染症の発生リスクが高まると指摘されているためです。

獣医師は、野生動物、家畜、ペットなど多様な動物と関わる専門職です。そのため、ワンヘルスを実現するうえで重要な役割を担う存在といえます。

 

ワンヘルスとSDGsの深い関係

ワンヘルスの考え方は、国連が掲げる SDGs(持続可能な開発目標) とも深く関係しています。

例えば、SDG3「すべての人に健康と福祉を」 は、感染症対策や公衆衛生の向上を目指す目標です。人と動物の健康を一体として考えるワンヘルスの理念は、この目標と密接に結びついています。

また、SDG2「飢餓をゼロに」 では、安定した食料供給が重要な課題となります。家畜の健康管理や持続可能な畜産は、この目標の達成に欠かせません。

さらに、SDG12「つくる責任 つかう責任」 では食品の安全性やサプライチェーンの管理が、SDG15「陸の豊かさも守ろう」 では野生動物の保全や生態系の管理が重要なテーマとなっています。

このように、獣医師の活動は複数のSDGs目標と深く関わっています。言い換えれば、獣医師はSDGsを現場で実践する専門職の一つともいえるでしょう。

 

日本の獣医学が果たす役割

日本は、獣医学や公衆衛生の分野で世界的にも高い評価を受けています。家畜衛生や食品安全の制度は国際的にも信頼されており、感染症対策の研究も進んでいます。

一方で、野生動物と人間の関係、気候変動による生態系の変化、新興感染症のリスクなど、課題はますます複雑になっています。こうした問題に対応するためには、医療、農業、環境、行政など多くの分野が連携することが重要です。

ワンヘルスの実現は、一つの専門分野だけでは達成できません。獣医師はその中で、動物と人、そして自然環境をつなぐ重要な役割を担っています。

 

世界の獣医師が東京に集います

こうした課題を議論する国際的な場として開催されるのが、第41回世界獣医師会大会(World Veterinary Association Congress 2026)です。

大会では、獣医学の研究発表や国際セッション、市民公開講座など、さまざまなプログラムが予定されています。世界中の研究者や専門家が集まり、ワンヘルスや感染症対策、動物福祉、食品安全など幅広いテーマについて議論が行われます。

この大会が日本で開催されるのは、1995年以来、31年ぶりとなります。世界の獣医師が東京に集い、人と動物、そして地球の健康について議論するこの機会は、日本にとっても大きな意義を持つといえるでしょう。

英語テーマにある「獣医学がワンヘルスによる、より良い明日の鍵を握る」という言葉が、具体的にどのような形で示されるのか。その成果に期待が集まります。

 

【参考】

世界獣医師会大会2026  開催概要

World Veterinary Association Congress 2026(WVAC2026)

・会期:2026年4月21日〜24日

・会場:東京国際フォーラム

・主催:World Veterinary Association

公益社団法人 日本獣医師会

・共催:日本学術会議

・参加予定:約6,000人(約70カ国・地域)

・テーマ:ワンヘルスで世界の獣医療が示す未来

詳しくは公式サイトをご覧ください。

公式サイト https://wvac2026-tokyo.com/

 

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