2026年11月2日、災害対応の司令塔を担う「防災庁」が発足しました。防災庁は、これまで内閣府などに分散していた防災機能を強化し、事前防災から発災後の対応、復旧・復興までを一元的に担う組織です。初代防災大臣には細野豪志氏が就任し、政府全体の防災体制を強化する役割を担います。(※1)
発足初日、細野大臣は国民、中央省庁、都道府県に対し、「事前防災徹底のための緊急要請」を発出しました。国民には住宅の耐震化や備蓄など5つの取り組みを呼びかけ、行政にも防災体制の点検と強化を求めています。(※2、※3)
なぜ、防災庁の発足と同時に、全国民に向けた「緊急要請」が出されたのでしょうか。今回の要請の背景と、私たちに求められる備えを整理します。

なぜ今、「緊急要請」なのか
背景にあるのは、いつ起きてもおかしくない大規模災害への危機感です。細野大臣は緊急要請の中で、千島海溝地震、日本海溝地震、首都直下地震、南海トラフ地震、富士山噴火などを挙げ、「国難級の災害の発生が懸念されています」と述べています。(※2)
さらに、国難級の災害が発生した場合について、細野大臣は次のように呼びかけています。
「しかしながら、国難級の災害では、行政だけによる対応には限界があるため、国民のみなさま一人一人が『自らの命は自らが守る』ことが必要です。みなさまがしっかり備えることで、被害を大きく減らすことができます。」(※2)
「緊急」という言葉から、何か差し迫った情報があるのかと不安になった人もいるかもしれません。細野大臣は10月29日、自身のX(旧Twitter)で、「地震などの災害の予知情報が入っていることを契機とするものではありません」と説明しています。特定の地震や噴火が近く起きるという予測を受けたものではなく、いつ起こるかわからない災害に備えるため、今、行動を求めているのです。(※4)
細野大臣は、防災庁の発足にあたり、「世界一の防災大国を目指す」と述べ、国難級の大規模災害から国民の生命や財産を守るため、防災体制を強化する考えを示しました。(※5)
今回の緊急要請は、単なる防災意識の向上を呼びかけるものではありません。国、自治体、家庭それぞれに具体的な行動を求めている点が特徴です。
日本は地震や台風、豪雨などの自然災害が多い国であり、多くの人が日頃から防災を意識し、災害に備えてきました。今回の防災庁の発足と緊急要請を、これまでの備えを改めて点検し、さらに充実させるきっかけにしたいものです。
国・自治体・家庭、それぞれに求められる対策
今回、国民に求められたのは、次の5つの取り組みです。(※2)
① 住宅の耐震診断・耐震化、家具の固定
昭和56年以前に建てられた住宅は耐震診断を受け、必要に応じて耐震化を進めるよう求められています。家具や家電を固定し、家の中の安全を確保することも重要です。
② 水・食料、携帯用トイレなどの備蓄
水や食料は最低3日間、できれば1週間分を用意します。飲料水は食事に使う分も含めて1人1日3リットルが目安です。携帯用トイレやティッシュ、トイレットペーパーなども備えておきます。
③ ハザードマップ、避難場所、避難経路の確認
「揺れやすさマップ」や「津波ハザードマップ」などで自宅周辺の災害リスクを把握し、避難場所や避難経路を確認しておきます。
④ 非常持ち出し品の準備
避難時に必要なものをリュックなどにまとめ、玄関など、すぐに持ち出せる場所に置いておきます。
⑤ 防災訓練への参加
地域の防災訓練に参加し、避難や安否確認、炊き出し、簡易トイレの利用などを体験します。災害時に近隣の人と協力できる関係づくりも大切です。
国の中央省庁に対しては、業務継続計画(BCP)の点検・見直しや防災施策の推進が求められています。都道府県には、避難生活環境の改善や災害協定の締結・実効性の確保、市町村への支援などが要請されました。(※2、※3)
中央省庁と都道府県は、年末までに取り組みの進捗状況を報告することになっています。防災庁はその内容を点検し、必要に応じて再要請や勧告を行う方針です。(※2、※3)
1週間分の備蓄、何を用意する?
今回の要請で、家庭での備蓄は「最低3日間、できれば1週間分」と示されました。では、1週間分とはどのくらいの量なのでしょうか。
飲料水は、食事に使う分も含めて1人1日3リットルが目安です。1週間では21リットルとなり、2リットル入りのペットボトルなら約11本分に相当します。食料は、普段から食べ慣れているレトルト食品や缶詰、乾麺など、常温で保存できるものを中心に用意するとよいでしょう。(※2、※7)
見落としがちなのが、トイレの備えです。内閣府のガイドラインでは、携帯トイレの必要量は1人1日5回が目安とされています。1週間分では1人35回分が必要になります。(※8)
備蓄は、一度に大量に買いそろえるだけでなく、普段使っている食品や日用品を少し多めに購入し、使った分を買い足す「ローリングストック」も有効です。家族の人数や年齢、必要なものに合わせて、無理なく続けられる備えを進めましょう。
防災庁の発足を、実効性のある防災につなげる
防災庁の発足は、日本の防災体制を強化するための大きな節目です。しかし、新しい組織ができただけで災害に強い社会が実現するわけではありません。国や自治体が防災対策を着実に進めるとともに、家庭や地域でも具体的な備えを実行し、必要に応じて見直していくことが重要です。
大規模災害が起きたとき、行政による支援には限界があります。自分や家族の命を守るために、住まいの安全、備蓄、避難先を確認する。今回の緊急要請を、防災について改めて考え、行動に移すきっかけにしたいものです。
SDGsとの関係
目標11「住み続けられるまちづくりを」:災害に強いまちづくりや、地域の防災力の向上につながります。
目標3「すべての人に健康と福祉を」:災害による人的被害を減らし、避難生活での健康を守ることにも関係します。
参考・引用
※1 共同通信「防災庁、11月2日に発足 首相トップ、省庁横断の司令塔」(2026年9月25日、熊本日日新聞掲載)
https://kumanichi.com/articles/2039407
※2 防災庁「事前防災徹底のための緊急要請」(令和8年11月2日)
https://www.bousai.go.jp/juyou/emergency_request.html
※3 FNNプライムオンライン「【全文掲載】全国民に『事前防災徹底のための緊急要請』細野防災大臣『水・食料、携帯用トイレ等の備蓄』など」(2026年11月2日)
https://www.fnn.jp/articles/-/1144215
※4 J-CASTニュース「細野豪志防災担当相、防災『緊急要請』の理由を説明 『災害の予知情報』が契機ではない」(2026年10月30日)
https://www.j-cast.com/2026/10/30518815.html
※5 TBS NEWS DIG「防災庁発足『世界一の防災大国を目指す』初代・細野防災大臣」(2026年11月2日)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/3055106?display=1
※7 首相官邸「災害への備え 事前にできること」
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/sonae.html
※8 経済産業省「災害時におけるトイレの供給について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/disaster_toilet_popularization/pdf/001_04_00.pdf
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