買取大吉 バレーボールネーションズリーグ 2025 千葉大会(VNL 2025 千葉大会)は、前年の福岡大会で築かれた「SDGs大会」とも言うべき偉大なレガシーを引き継ぎ、さらに持続可能な運営モデルを進化させた、歴史に残る大会となりました。VNL 2025 千葉大会は、環境負荷の低減と社会的価値の創出のバランスを追求し、今後の国際スポーツイベントにおけるSDGs推進の新たな指針を提供します。今回は、VNL 2025 千葉大会の取り組みをSDGsの観点からまとめたレポートをお届けします。

選手と共に国歌斉唱を行う地元千葉のエスコートキッズ
本大会は、特に「未来を担う子どもたちへのレガシー継承」と「地域連携」に重点を置き、スポーツの枠を超えた社会的価値の創出を目指しました。
主要成果として、過去最高の総観客動員数90,554名(女子 39,543名+男子 51,011名)を記録。また、一部の海外チーム同士の試合(海外戦)のチケットが完売するという、VNL史上初の快挙を達成しました。
社会的意義としては、小中学生2,220名の観戦招待や、肢体不自由児協会招待、老人クラブ連合会優待割引など、多様性促進に注力しました。大会のパブリシティ効果は約334億円に上り、地域経済への貢献も果たしました。
1. 持続可能な世界のために:環境への画期的な挑戦
VNL 2025 千葉大会は、昨年の福岡大会に引き続き、持続可能な社会の実現に向けた多角的な取り組みを展開しました。特に今年は、「水」に焦点を当て、特定非営利法人日本水フォーラムとの連携により、日本での大規模国際スポーツ大会としては初めての試みに挑戦しました。
①水資源の大切さの啓発
大会を企画・運営する上で、選手の飲料水やシャワーといった“直接的な水消費”に加え、ボールなどの物品を製造する際や移動に使われる“間接的な水消費”にも着目しました。
製品のライフサイクル全体で使用される水量を測る**ウォーターフットプリント(WFP)を算出するために、バレーボール、弁当容器(プラスチック製)、移動(福岡から千葉ポートアリーナまで)の3つを選定しました。
観客向けには、QRコードを読み取って参加するクイズ形式が採用され、「見えない水(Invisible Water)」をテーマに啓発活動を実施し、合計1,115件の回答を得ました。この取り組みにより、観客はスポーツと水の関係性を感じ、水について楽しみながら考える機会が提供されました。
【水啓発活動から得られた主な知見】 参加者の約半数が「見えない水」や利用可能な水資源量を正確に把握していない一方、水問題への関心は約7割に達し、日常生活で節水行動を行う人は約6割に上りました。また、「見えない水」や水道インフラへの関心は年代が上がるほど高まる傾向が見られました。

クイズ・アンケートの呼びかけをするボランティアの皆様
②小型充電式電池リサイクルの啓発
スマートフォンなどの電子機器を支える小型充電式電池は、不適切な廃棄による火災事故などが深刻な社会問題となっています。これらの電池には希少金属資源が含まれており、適切な回収・リサイクルは環境保全および火災予防の観点から極めて重要です。
本大会では、一般社団法人 JBRC(ジャパン・バッテリー・リサイクル・センター)が取り組む小型充電式電池の適切な排出方法やリサイクルに関する啓発チラシを入場者全員に配布し、希少金属資源の回収・リサイクルの推進に貢献しました。

入場者全員に啓発チラシを配布しました
③スティックバルーン、廃プラリサイクル
大会運営や応援によって発生するスティックバルーンや廃プラスチックの処理にあたり、VNL 2025 千葉大会は、技術イノベーションによるゴミ処理を推進する企業・株式会社輝陽をパートナーとしました。
使用済みのスティックバルーンをはじめとするプラスチック製品は、高温高圧加水分解システムにより、CO2排出量を大幅に抑えた無害化・再資源化処理を実施しました。本大会では、10トントラック1台分に相当する6立方メートルのスティックバルーンと廃プラスチックが回収されました。これは、およそ12,000人~24,000人の観客が回収に協力したことになります。
④フードロス削減
大規模スポーツ大会における食品ロスを課題とし、VNL 2025 千葉大会では、前年の福岡大会に引き続き、運営スタッフへの弁当配布を廃止し、代わりにミールチケットを配布しました。スタッフは、徒歩圏内の商業施設のレストランやキッチンカー、宿泊施設近くの飲食店でチケットを使用でき、自身のタイミングで温かい食事を取ることができました。
この取り組みにより、余剰供給によるフードロス2,000食以上(従来の想定廃棄量)の大幅な削減を実現し、フードロスゼロを達成しました。同時に、地元飲食店への経済効果ももたらしました。
⑤持続可能な会場設営とごみ分別の呼びかけ
千葉ポートアリーナでの会場設営において、持続可能な資源利用を追求し、1階試合会場の特別観客席、特別体験ラウンジ、スタッフルームなど、大会に必要なほとんどの設備が前回の福岡大会で使用された資材を用いて組み立てられました。これらの資材は次回大会でさらに再利用される予定です。
また、来場者には会場内外のポスターやごみ箱を通じて適切なごみ分別の協力を呼びかけ、「VNL2025千葉大会は、サステナブルなスポーツ大会を目指しています。バレーボールがもっと愛されるように、みなさまのご協力をお願いいたします。」というメッセージを掲示しました。
2. 次世代へのレガシー継承とインクルージョンの促進
本大会は、未来を担う子どもや若者たちへのレガシー継承を最重視しました。
①未来の担い手の積極的な参加
• 小学生クループログラム VNLとしては初となる「小学生クループログラム」(職業体験)が7月13日と20日の2日間に渡り実施されました。プログラムには11名の地元小学生が参加し、大会運営を通じて、国際大会が多様な人々の協力で成立することや、フードロス削減や水問題などSDGsへの取り組みを現場で体験しました。

インフォメーションセンターでのクルー体験
• エスコートキッズ VNLでは初めての取組として、地元クラブチーム所属の小学生45名がエスコートキッズに参加し、選手と共に国歌斉唱を実施しました。
• 小中学生観戦招待 地元の小中学生合計2,220名が海外戦に招待されました。海外のトップレベルの選手の真剣勝負に触れることで、スポーツの楽しさや国際交流の大切さを学ぶ機会となりました。

初めてのVNL観戦に興奮する生徒たち
②スポーツを超えた多様な交流とインクルージョン
• コイントスセレモニー 試合開始前のコイントスセレモニーには、各界の若手アスリートが招かれました。ゲストには、柔道選手(2024年パリ五輪金メダリスト)の角田夏実さん、元バレーボール日本代表の新鍋理沙さん、石井優希さん、元スピードスケート選手(2018年平昌五輪金メダリスト)の髙木菜那さん、パルクール選手の朝倉聖さん、フィギュアスケートの中田璃士さんなどが含まれ、スポーツのジャンルを超えた協調を象徴しました。

男子代表戦でコイントスを行ったフィギュアスケート世界ジュニア選手権優勝の中田璃士選手
• ハーフタイムショー VNL初となるパルクール・ハーフタイムショーでは、プロアスリートの朝倉聖さん、泉ひかりさん、大貫海斗さん、関雅仁さん、宮崎裕来さん、亀井彩桜さんらがアクロバティックな演技を披露しました。また、OrientalBio シルバースターのチアリーダーとそのキッズチアリーダーも参加し、会場を盛り上げました。

ハーフタイムショーで華麗なパフォーマンスを披露するオリエンタルバイオシルバースターチアリーダーとキッズたち
• インクルーシブな招待 7月16日には、肢体不自由児協会の方々の観戦招待を実施し、参加者は熱戦を間近で楽しみました。
• 始球式 VNL日本大会のコンセプトである「FIVBと地元行政の協力」を象徴する始球式には、神谷俊一千葉市長や、大会名誉会長の熊谷俊人千葉県知事などが参加しました。
3. 地域との連携と地域経済への貢献
VNL 2025 千葉大会は、地域社会との連携を深め、大会と地域が互いに支え合う新たなモデルを提示しました。
①ふるさと納税プログラム
2025年5月19日より、千葉市のふるさと納税返礼品としてVNL 2025 千葉大会の観戦チケットが提供されました。この取り組みは、全国のバレーボールファンを惹きつけ、観光振興や地域の知名度向上に貢献するとともに、ふるさと納税という仕組みを通じて地域財源の確保につながりました。
②パブリック・ビューイング/老人クラブ優待割引
SDGsの理念である「誰一人取り残さない」に基づき、千葉市役所ではチケットを持たない市民向けにパブリック・ビューイングを実施。2日間で約240名の市民が参加しました。また、一般社団法人千葉市老人クラブ連合会と連携し、加入する高齢者への優待割引を実施し、世代を超えた大会参加の機会を創出しました。
さらに、7月18日の男子日本対ブラジル戦は全国21か所の映画館でライブ・ビューイングとして中継され、地方在住のファンにも観戦機会が提供されました。

モニターで繰り広げられる熱戦を応援する千葉市民の皆様
③バレーボール体験教室
6月29日には、市内中学校女子バレーボール部の生徒約100人を対象に、元バレーボール女子日本代表選手である石井優希さん、新鍋理沙さんをゲスト講師に迎えたバレーボール体験教室を開催しました。
④ミールチケットと地産地消の推進
ミールチケット制度は、フードロス削減に加え、地域経済の活性化に大きく貢献しました。ミールチケットは、会場周辺、ペリエ千葉、幕張エリアの合計208店舗(レストラン、キッチンカー、コンビニなどを含む)で使用可能でした。
また、キッチンカー選定においては「千葉県の人や、千葉県の食材を使っているお店を優先的に選ぶ」という地産地消の考え方を重視し、輸送にかかるエネルギーを削減するとともに、地域の特産品をアピールする役割を果たしました。
⑤ボランティア
市民ボランティア、企業ボランティア、学生ボランティアなど、延べ868人もの方が大会運営を支え、地域との絆を深める重要な要素となりました。
まとめ
VNL 2025 千葉大会は、過去最高の観客動員数90,554名を達成し、持続可能な運営モデルを進化させました。
本大会の最重要テーマは「未来を担う子どもたちへのレガシー継承」であり、VNL初の「小学生クループログラム」や「エスコートキッズ」を実施。肢体不自由児協会を含む2,220名の小中学生を招待し、「子どもたちが夢を育む貴重な機会」を創出しました。
環境面では、日本で初めて大規模な「水」啓発活動を実施し、ウォーターフットプリントの算出を通じて限られた水資源を次世代に引き継ぐための意識向上に貢献。また、高温高圧加水分解システムを用いた使用済みスティックバルーン等のリサイクルやフードロスゼロの継続など、持続可能な未来に向けた具体的な指針を提示しました。
VNL 2025 千葉大会は、スポーツの力を通じて社会的責任を果たし、未来への大きな希望とSDGs推進の指針を確立したといえるでしょう。
※写真提供:株式会社CB
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