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IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025徹底解説 日本初の挑戦「健常者とパラクライマーが同じ舞台に」~境界を越えて挑戦する、スポーツクライミングの新たな未来~

 

はじめに:IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025とは

2025年10月、福岡県において「IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025」が開催されます。本大会は、国際スポーツクライミング連盟(IFSC)が新設した国際大会であり、スポーツクライミングのシーズンを締めくくると同時に、同競技の未来を切り拓く先駆的な意義を持っています。

最大の特徴は、日本で初めて「健常者とパラクライマーが同じ舞台で競技する国際大会」となる点です。世界トップ6か国が男女混合チームで挑む国別対抗戦「IFSC NATIONS GRAND FINALE」と、2028年ロサンゼルスパラリンピックで採用される8クラスによる「IFSC PARA CLIMBING MASTER」を同時に開催します。健常者とパラクライミング選手が同一大会で競技するのは、日本初の試みです。

この大会は、単なるシーズンの締めくくりにとどまらず、「共生」や「多様性」「革新性」をテーマに掲げ、新たなルールや競技フォーマットの実験場としても位置づけられています。世界のトップ選手や関係者のフィードバックを通じて、将来的にオリンピック・パラリンピックにも影響を与え、スポーツ界全体の進化と国際的な存在感の向上に寄与することを目指します。

さらにこの大会は、オリンピック以外で初めて、クライミングが地上波で生中継されという画期的試みがなされます。これはスポーツクライミング・パラクライミングの認知を広げるとともに、メディアを通じて、全国そして世界に、パラクライマーの姿を広く伝え、パラクライマーの挑戦と人間の可能性の発信し、「誰一人取り残さない」インクルーシブな社会の実現を目指します。

 

大会概要:主な特徴と基本情報

大会名称・日程・会場

● 大会名総称:IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025
● 英語名称:IFSC NATIONS GRAND FINALE / IFSC PARA CLIMBING MASTER
● 開催日程:2025年10月23日(木)~26日(日)の4日間
● 会場:筑豊緑地公園 / いいづかスポーツ・リゾート ザ・リトリート(福岡県飯塚市仁保8-37)

競技内容

本大会では、男女混合の国別対抗戦とパラクライミングを同時開催します。競技種目は「チーム ボルダー」「チーム リード」「パラクライミング」の三種です。ボルダーとリードは従来のスポーツクライミング種目であり、パラクライミングは障害の程度や種類に応じて複数のクラスに分かれて実施されます。

主催・共催・協力

● 主催:国際スポーツクライミング連盟 (IFSC)、IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025組織委員会、一般社団法人日本パラクライミング協会(JPCA)
● 共催:福岡県、飯塚市、公益財団法人福岡県スポーツ推進基金
● 協力:公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会 (JMSCA)

参加資格・規模

● 参加資格:IFSC加盟国・地域のNF(ナショナル・フェデレーション)所属選手(国別は6ヵ国)
● 参加選手:
チーム(国別) 6 ヵ国(@最大 1 0 名× 6 ヵ国/最大 6 0 名)
パラクライミング クラス オープン 全 1 9 クラス放送予定
● フジテレビ他、ABEMAにて配信予定

 

大会のコンセプト:「共生」と「未来への挑戦」

多様性と革新性を重視した大会設計

本大会は「Team & Para Futures」をテーマに掲げています。スポーツクライミングの未来を切り拓くため、以下のような特徴を持っています。

● 男女混合チーム戦の導入

国別対抗戦は、世界のトップクライマーが国を背負い、個人の力だけでなくチームの連携や戦略性が問われる新しい競技スタイルです。従来の個人戦とは異なり、選手同士のサポートやチームとしての意思決定が勝敗を分ける点が特徴で、観戦者にとってもドラマチックな展開が期待されます。

● 日本初・健常者とパラクライマーの共催

パラクライミング国際大会を同時開催することで、「共生社会」の実現に向けたメッセージを強く発信します。リード・ボルダー・パラクライミングを融合させた新しいエキシビションも行われ、相互尊重や多様性の体現が目指されます。

● 新ルール・新フォーマットの実験場

本大会は単なるシーズンの締めくくりではなく、革新的なルールやフォーマットを試す場でもあります。得られたフィードバックや知見は、将来的にオリンピックやパラリンピックへの追加種目化やルール刷新にもつながると期待されています。

 

パラクライミングの未来と社会的意義

パラクライミング大会は、従来国際大会への参加機会が少なかった国や選手、新たに競技を志す者にとって、チャレンジしやすい「未来への扉」となります。大会期間中には技術向上を目的としたワークショップが実施され、国や障害の垣根を越えた交流やコミュニティ形成が大きな目的として掲げられています。
また、2028年ロサンゼルスパラリンピックで正式採用される8カテゴリーの実施を通じて、次世代パラリンピアンの発掘や競技人口拡大を目指します。

 

IFSC(国際スポーツクライミング連盟)について

 

組織概要

● 連盟名称:International Federation of Sport Climbing (IFSC)
● 主要大会:世界選手権、ユース世界選手権、ワールドカップ
● 参加国数:95か国

IFSCは2007年1月27日、前身であるUIAA(国際登山山岳連盟)から独立する形で設立されました。国際オリンピック委員会(IOC)および国際パラリンピック委員会(IPC)から承認を受けています。競技としてのクライミングを世界規模で発展させることを目的とし、運営、ルール管理、プロモーション、発展や開発を担っています。

近年の動向・加盟国・大会参加者

2016年、スポーツクライミングはリオデジャネイロで開催されたIOC会議で2020年東京オリンピックの追加競技として承認されました。また、2018年のブエノスアイレスユースオリンピックからはメダル表彰競技として採用されています。

● 加盟国内訳:ヨーロッパ43カ国、アジア23カ国、アフリカ8カ国、オセアニア4カ国、北南米17カ国
● 加盟国の増加:14年前と比べて25%増加
● 近年の大会実績
– 2019年:ワールドカップ(12都市開催)に世界中から70,300人が参加
– 2021年:ユース世界選手権(ロシア・ボロネズ開催)に37の国と地域から417人が参加

日本人選手の活躍も目立ち、世界ランキング上位に多数の日本人選手が名を連ねています。

 

 

競技種目の解説

スポーツクライミングの三大種目

 

ボルダー <STRONGER/より強く>

 

IFSC Climbing World Cup Salt Lake City (USA)

ボルダーは、マットで安全を確保しながら高さ5メートル以下の壁に設定された複数の課題(コース)を制限時間内にいくつ登れるかを競う種目です。各課題には制限時間があり、その中で複数回トライも認められていますが、少ない回数で登ることも評価の対象となります。

 

リード <HIGHER/より高く>

 

IFSC World Cup Comunidad de Madrid 2025

リードは、スポーツクライミング競技の中でも最も古い歴史を持つ種目です。ロープで安全を確保した競技者が十数メートルの壁に設定されたコースを登り、その到達高度を競います。

 

パラクライミング <TOGETHER/一緒に>

 

IFSC Climbing Paraclimbing World Cup 2025 Salt Lake City (USA)

パラクライミングは、視覚障害および身体機能障害を持つ選手が参加します。障害の種類や程度に応じて細かくクラス分けが行われ、選手はそのクラスごとに競技します。

 

オブザベーション(課題下見)の重要性

 

2023 IFSC World Cup in Hachioji (JPN)

競技開始直前に課題やルートを確認する「オブザベーション」が特徴です。選手たちは順位を競う「ライバル」でありながら、オブザベーション時には相談も認められており、困難をともに乗り越える「仲間」としての側面も強調されます。

 

パラクライミングのクラス分けと2028年パラリンピック

クラス分けの基準

視覚障害
● B1:視覚障害の中で最も重いクラス
● B2・B3:光覚や視力・視野によってクラス分け

身体機能障害
● 上肢機能障害(AU2・AU3など)
● 下肢機能障害(AL1・AL2など)
● 関節可動域、筋力、その他機能障害(RP1・RP2・RP3など)
数字の小さいクラス(例:AU2・AL1・RP1)が、より障害の程度が重いクラスです。

2028年ロサンゼルスパラリンピックで採用予定のカテゴリー
● 【男子】B1、AU2、AL2、RP1
● 【女子】B2、AU2、AL2、RP1
本大会はこれら8カテゴリーを実施します。

 

 

大会スケジュール

 

大会を通じて目指すもの

新たな競技スタイルの確立

本大会では、チーム競技の未来像を世界に提示します。選手・観客・関係者すべてにとって新たな可能性を体感できる貴重な機会となります。国別対抗戦はオリンピックの追加種目となり得る競技フォーマットであり、実践的なフィードバックの場としても重要です。

パラクライミングの発展

これまで国際大会への出場機会が限られていた国や選手にとって、本大会は挑戦の場となり、未来のパラリンピアンを発掘することにもつながります。大会期間中のワークショップを通じて技術向上を支援し、参加選手同士のつながりを深めることで、強固で多様な“パラコミュニティ”を形成することが目的です。

社会における共生の実現

リード・ボルダー・パラクライミングを融合させたエキシビションを実施し、相互尊重と多様性を体現する大会を目指します。スポーツを通じて、すべての人が活躍できる社会の実現への歩みを加速させる役割も担っています。オリンピック以外で初めてのクライミング競技の地上波生中継という画期的試みがそれをさらに加速させます。

 

 

IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025がもたらす意義

 

日本と世界のスポーツクライミング界への影響

本大会は、国内外のスポーツクライミング界にとって大きな転換点となります。日本で初めて健常者とパラクライマーが同時に競技する姿は、障害の有無を超えた「共生社会」の実現を示唆します。また、新たな競技フォーマットやルールの誕生は、今後のオリンピックやパラリンピックの競技構成にも大きな影響を与える可能性があります。

 

福岡県の取り組みと今後

スポーツ立県、さらにワンヘルス推進県、として知られる福岡県の支援のもと、本大会は包摂的かつ先進的な国際スポーツ大会のモデルケースとなることを目指しています。クライミングの力を通じて、地域社会や世界に向けて強いメッセージを発信します。

 

まとめと関連情報

IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025は、スポーツクライミングの未来を切り拓く画期的な国際大会です。男女混合チーム戦やパラクライミングの同時開催、新たな競技フォーマットの導入など、従来にない革新性と多様性を体現しています。スポーツを通じてすべての人の活躍を支援し、社会における共生の実現を目指すこの大会の動向に、今後も注目が集まります。

関連記事・参考情報

● IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025公式サイト https://www.live-link.life/online/cgf2025
● IFSC公式サイト(大会情報・ルール等)https://www.ifsc-climbing.org/
● パラクライミング協会(JPCA)公式サイト https://www.jpca-climbing.org
● 福岡県スポーツ推進基金 https://fukuokasports.org

今後、公式ウェブサイト等で大会の詳細情報や最新スケジュールが発表される予定です。興味を持った方は、ぜひ最新情報をチェックしてください。

また、当ポータルに、「IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025」開催の発表記者会見の抄録を掲載し、関係者各位のそれぞれの立場からのユニークで真摯な思いをお伝えする予定ですので、是非ともご参照ください。

※ 資料及び写真:IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025組織委員会より提供

 

SDGs目標10:世界中から不平等を減らそう <人や国の不平等をなくそう>

[目標10.2 ]2030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、生まれ、宗教、経済状態などにかかわらず、すべての人が、能力を高め、社会的、経済的、政治的に取り残されないようにすすめる。

[目標10.3 ]差別的な法律、政策やならわしをなくし、適切な法律や政策、行動をすすめることなどによって、人びとが平等な機会(チャンス)をもてるようにし、人びとが得る結果(たとえば所得など)についての格差を減らす。

 

SDGs目標17:<パートナーシップで目標を達成しよう>

[目標17.17]さまざまなパートナーシップの経験などをもとにして、効果的な公的、官民市民社会のパートナーシップをすすめる。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

【関連記事】

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◆<AIポッドキャスト>【SDGs JAPAN PORTAL】「持続可能な国際スポーツ大会のさらなる進化を目指して──VNL2025千葉大会の挑戦」を、YouTubeにアップしました。AIのトークによるポッドキャストで、VNL2025千葉大会の素晴らしさを、音声でダイレクトに感じられる番組となっています。ぜひご視聴ください。

https://youtu.be/xm_V6FdmeNc?feature=shared

 

◆SDGs JAPAN ポータルとは

https://japan-sdgs.or.jp/about

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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