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江崎貴久さん「日本発の地域振興型エコツーリズム」-その3- 島っ子ガイド:教育の地域性と普遍性

江崎貴久さんへのインタヴュー                                                          聞き手:青山アリア

今回は、観光と地域振興を、見事にまとめ上げ、日本発の地域振興型エコツーリズムを創造し、実践されている、江崎貴久さんに、地元鳥羽市で、お話を伺いました。江崎貴久さんは、老舗旅館「海月」の女将であり、有限会社OZ(オズ)の代表取締役として、また、伊勢志摩国立公園エコツーリズム推進協議会の会長として、長年新しい地域のあり方を提示し推進してこられているパイオニアです。この記事は、伊勢志摩観光一般に関する一連の長いインタビューの中から、海の豊かさ、ジェンダー、教育、働きがい、まちづくり、パートナーシップなど、SDGsに参考になる話題を取り上げ、江崎さん自身の言葉をできるだけ忠実に再現しながら、お届けします。

その➀ 鳥羽という地域

  •    漁師町鳥羽:漁師さんたちが守る海の豊かさ
  •    日本の資源利用のルール
  •    漁業に携わる人々の変化
  •    海女文化に象徴される漁村のジェンダーの平等性

その② 釣りの体験ツアー:観光客に地元の資源を楽しんでもらう

  •    無人島ツアー:資源を守るのは地元の人たち
  •    観光が土地の人と関わらないとできないということ
  •    地域振興型の鳥羽式エコツーリズムの必然性

その③ 島っ子ガイド:教育の地域性と普遍性

  •    子供たちから島全体、そして未来に
  •    エピローグ

島っ子ガイド:教育の地域性と普遍性

AA: ――子供たちに、伝えたい、残したい、こととか、ありますでしょうか?

EK: うーん、あまりそういうのないっていうか。何か、私が、これを残してほしい、とかってことじゃなくて、子供たちが、自分で何か見つけてくれたらいいな、って思うんですけど。

うちに、「島っ子ガイド」っていう取り組みをしていて、2009年ぐらいからやっていて。離島の子供たちにガイドをしてもらってるんですよ。小学生ですね。今もう、全校生徒でやって、学校行事になっているんですよ。菅島と、神島っていう島の子供たちなんですけど。

で、お客さん自体は、1年に1回だけ、「島っ子フェスティバル」っていうもんで、入ってもらえるんですけど。普段の時は、視察だけにしておいて。これは観光のためじゃなくて、教育のためにやってることなんで、あんまり、知らない人が入ってくると、わからないじゃないですか、素性とかは。

離島の子たちって、知らない人に出会うっていう経験が極端に少ないんですよね。ちっちゃい漁村の中でずっと育ってるし、毎日毎日知ってる人間だけの世界で生活しているじゃないですか。小学校までは島にいて、中学校になると、本土に来るんですよね。そうすると、うまく、友達作りができなかったり、コミュニケーションが上手にとれなかったりするっていうのが、課題やって。で、その時の先生といっしょに、じゃ、何か、先生、やってみよか、って。で、じゃあ、ガイドをしてもらおう。それで、ガイドしてもらうときに、子供たちに、自分たちの島の中で、大好きなこといっぱい探してきてもらうんです。そん中で、自分が一番好きって思ったことを中心に、何でそれを選んだの?とか、もう少し深く話をしていくと、ちゃんと理由があるじゃないですか。で、それがテーマになって、そのテーマを伝えるためのプログラムというか、解説を、どんな表現でもいいんですよ、プレゼンテーションは何だって。解説してもいいし、踊っても、歌っても、寸劇とか、俳句とか、何でもいいんです。何か、そういう風に表現をして、やってきてて。

で、道徳の教科書にのしてもらったりとか。何よりね、島の子たちね、成績が良くなったんですよ。あの、人にちゃんと伝えるってことやったり、伝えたいから、それのために勉強もするし、字もちゃんと書くし、算数がはいったり、最近、外国の人がくるから、英語勉強したり、とかて、するようになって。

それに、好きなことが何なのか、とかやっていくので、何かこう、ちょっと子供たちも変わってきてくれたみたいで。大学に行く子が出てきたり、漁師になる子も、何か、すごい、今までゼロやったのが、漁師になったりとか。全然、こう自分たちが自分たちとして道を決めるようになったし。よかったなと思っていますよ。

 

子供たちから島全体、そして未来に

AA: ――素晴らしい取り組みですね。視察に来られる方々も多いんですか。

KE: そうなんです。何か、ASEANとかの国の人たちが春と秋に来てくれて、毎年。そうすると、あんな小さな島に、しかも外国人の人が視察に来てくれるから。で、良いのは、視察なので、先生のヒアリングとか、親のヒアリングとかもやってくれるんですよ。そうすると、すごく、こう、島ぐるみになって。その菅島なんかは、漁をやっても、何をやっても、自分たちのところは、一番じゃない、みたいな、劣等感というか、そういうのがあったんですけど、島っ子ガイドの取り組みして、表彰されたり、文部科学大臣賞もうたりとか。全国、世界から注目される、ね、ようになったので、すごい自信になったみたいで。ま、かといって、何かが、すごく良くなったかというと、子供たちのそういうところは、モチベーションとか変わったんですよね。でも、産業として、というところまでは、まだまだいけてないけど。ま、その子たちが、きっと、漁師になって帰ってきたり、今から、変えてくれるかな、とは、思いますけどね。みんながいたから、ほんと、できるっていうかねえー。

AA: ――これから、ポストコロナは、自分たちのエコシステム全体のことを、みんな考えだすと思うんですよ。そこで、今日のお話は、どういう暮らし、自分たちの国とか、自分たちの街、自分たちの村、っていうのを、考える上で、ものすごく大きなヒントをいろんな方に与えることになると思います。本当に、素晴らしいお話を、ありがとうございました。

 

エピローグ

AA: ――本当に現場をよく見て、全てにちゃんと向き合ってやってらっしゃいますね。海月の女将になるっていうのは、ちっちゃい時から?

EK: あ、全然。だって、兄がいるので。ただ、向き不向きって、あるじゃないですか、で、ま、どう考えても、私の方が向いてるの。うちが、一回、実は、倒産してるんです。ほんで、23の時に、それを一回全部整理して、終わったら、私は私の道を行くつもりで、当時暮らしていた東京から、とりあえず帰ってきたんですけど。何か、いろいろ聞いてたら、やれるんちゃう?みたいな。

それで、自分の会社作って、その経営権をこっちに引き継いで、って形でやったんで。長女将で、大女将で、いるけど、若女将が社長みたいな、っていう。いつも、最初の頃は、コンパニオンの子に間違われてましたしね。あのー、なので、なるべく老けて見えるように、老けて見えるように、て、最初はしましたよね。最近は、若作りを頑張ろうと思います(笑)。

でも、昔のことですけどね、目の前に何かが降ってくるので、いつも。それで、ちょっと、何ていうのかな、ちゃんと考えたい所が、多分、元々あるから。そしたら、帰ってきて、観光事業者の人がいっぱいいて、すごい、いろんな事は言ってくれるんですけど。でも、何かね、乗っかれないんですよねー。何か、そもそも、うちが倒産したのは、うちの問題もあるけど、観光そのものに、問題があるんやん、と思うから。そうすると、今の観光事業者の人達に、何か私に吹き込まれて、洗脳されると、もう、大事な事が見つけられなくなってしまうので、気持ちだけはいただきますが、付き合いません、みたいな、感じで、ずっとやってきたので。まー、何かをしているとしたら、そこをちょっと指摘した部分があるので。漁師さんとか、すごい仲良いんですけど、観光業者の人たちは、どっちかというと、ちょっと。仲悪くはないんですけど、どっか、こう、線がある、というか、本音で話するどこじゃないんですね。今まで、酒飲んで、連んでないから。漁師さんとかの方が、やっぱ、その。

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