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独自の“働き方改革”を次々に実施。 持続可能な介護現場から豊かな未来を。 介護付有料老人ホーム『あかしあ大河』 -その3-

 

あかしあ流働き方改革は

働きたくても働けないお母さんの支援から

これからのコミュニティづくりへ。

わが国で、“コミュニティの崩壊”が問題視されるようになって、長い歳月が経ちました。コミュニティといえば、“家族”、“職場”、“地域”の3つがあるとされていますが、核家族の増大や価値観の多様化、ネットの浸透などにより、個性が発揮されるどころか、孤立化が深まっているようにさえ感じられます。

これまで、私たち日本人は“おたがいさま”や“おかげさま”といった言葉に象徴されるように、“お互いにつながっていること”、“寄り添い支え合っている”という意識や行動を大切にしてきました。それは、東日本大震災の際に、お互い助け合う人たちに全世界が驚き、称賛したところにも現われています。

かつての“向こう三軒両隣”的なことではありませんが、さまざまな世代が交流し、知恵を交換し合い、つながっていく。そのような原点回帰的な動きが求められているような気がします。

そんな中、『あかしあ大河』では、独自の働き方改革を発展させて『めだかの学校』というモデルを動かしています。これは、これからのコミュニティのあり方を模索するような活動にもなっているようです。-その3-では、この『めだかの学校』について、三田さんにお話を伺いました。

 

おじいちゃん、おばあちゃんとの交流で

子どもたちの社会性がのびのび育まれる。

『めだかの学校』

編集部: まずは、『めだかの学校』とは、どんなモデルなのかを詳しく教えていただけませんか?

三田:『めだかの学校』というのは、-その2-で紹介した『ワーキングマザープロジェクト』と同じく、お母さんに子どもを現場に連れてきてもらって働いてもらうモデルです。違いは対象にしている子どもが小学校低学年だということです。施設に来た子どもは、ここで宿題をしたり、読書をしたり、時には簡単な介護の仕事を手伝ったりしています。

2020年3月からスタートさせたのですが、このモデルを考えたきっかけのひとつには、新型コロナウイルスの影響がありました。感染拡大の対策で学校が休校措置を取ったので、学童保育に預ける事や家族の協力が得られず休まざるを得ないスタッフが出てきたのです。このような状態になるとスタッフは仕事ができないので収入が減ってたいへんです。施設の方も貴重なスタッフが抜けて他のスタッフの負担増になりサービスの質の低下を招くことになります。人財不足の介護現場において、これは致命的な問題です。これは、なんとかしなければ…と考えている中、「学校に行けない子どもといっしょにここで働けばいいじゃないの」ということではじめたのが、このモデルです。

編集部:いわば、“働きながら子どもの見守りができる”モデルですね。

介護の仕事を手伝う『めだかの学校』の子ども

 

世代間交流と職住一致のシステムから

新しいコミュニティづくりが見えてきた。

三田:『めだかの学校』は、短い間に、とても大事なことを気づかせてくれました。それは、『ワーキングマザープロジェクト』でも漠然と感じていたことなのですが…。

編集部:どんなことに気づかれたのですか?

三田:どちらのモデルも、当初は“働きたくても働けないお母さん”にフォーカスしてはじめたのですね。でも、いざはじめてみると私たちが想像もしていなかった成果が現われました。それは、“子どもたちの社会性が育くまれる”ということです。

例えば、こんなことがありました。それは、『ワーキングマザープロジェクト』の第1号の子どもなのですが。この子は、すごく人見知りをする子で、もっとも大人と関わる時間が少ないゆえの人見知りだったのですが。施設に来ても、知らない人に抱っこされると泣いてしまう、いつもお母さんの後ろに隠れて周りの様子をうかがっているような子でした。その子が、お母さん以外の知らない大人たちがたくさんいる環境に放り込まれたのです。入居者のおじいちゃん、おばあちゃんは、自分のひ孫のような存在だからかわいくて仕方がない。みんなが、この子に笑顔で接していたんですね。すると、日を追うごとに慣れてきた。ここに居る大人たちは、自分の味方なんだと感じたのか、少しずつ心を開いていってくれたんです。最終的には、入居者に呼ばれたら、その人の膝の上にと座ったり、入居者の部屋に遊びに行っていたり…。そして、その子は、幼稚園に入っても、すぐに友だちができて仲良くできるそうです。施設で過ごしているうちに、集団での自分の立ち位置を知ることを自然と身につけたんでしょうね。こういう子が、将来、介護の道を進んでくれたらな、とも思いました。そういう意味では、次世代の介護スタッフ育成に役立っているのではないか、と予感しているところもあります。

入居者とスタッフの子どもの温かなコミュニケーションが生まれている

編集部:話を伺っていて、学生の頃に学んだ言葉を思い出しました。それは、社会学の専門用語なのですが、“ゲマインシャフトとゲゼルシャフト”です。

これらは、ドイツの社会学者F.テンニースという人が提唱した社会関係の概念で、“ゲマインシャフト”は“家族や仲間、地域といった自然発生的な集団”を指し、“ゲゼルシャフト”は、“生産機能やある目的の達成を目指す人工的な集団”とされています。これまで、私たちは、どちらかというと“ゲゼルシャフト”的なこと、効率や生産性、利益率みたいことばかりを指向して進んできたように感じます。持続していくことよりも、その場での成果を重視してしまうような…。でも、SDGsで謳われている持続可能な世界を実現するには、“ゲマインシャフト”的な動き、 “寄り添い支える取組み”が求められているのかもしれませんね。

三田:確かに『ワーキングマザープロジェクト』にしても『めだかの学校』にしても、いわゆる“コミュニティづくり”の取組みのひとつのスタイルあるいはモデルだと感じています。それは、やはり継続していかなければならない取組みだな、と。そして、次世代のスタッフ育成のモデルになればいいなと思っています。それを教えてくれたのは、他でもない施設に来てくれた子どもたちでした。

編集部:まさにSDGsですね。

-その4-につづく

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