VNL2024福岡大会(*)の意義に関する連載の第4回目は、福岡県とのパートナーシップによって生み出されたSDGs施策とその経済波及効果についてまとめます。
* 「買取大吉 バレーボールネーションズリーグ2024福岡大会」(VNL2024福岡大会)2024年6月4日から16日にかけて約2週間にわたって福岡県北九州市で開催
* 記事内容の詳細は、本ポータルサイトで連載中のVNL2024福岡大会の各記事をご参照ください。
<目次>
1. 福岡県とのパートナーシップによって生み出されたSDGs施策
2. 経済波及効果
1. 福岡県とのパートナーシップによって生み出されたSDGs施策
VNL2024福岡大会では、大会に直接関連する取組に加えて、それに端を発したSDGs事業が多く企画され、広く市や県内で展開されました。これらは、環境問題に積極的に取り組んできた地方自治体(福岡県)とFIVB/VWとが直接パートナーシップを組んで進めたVNL大会という、日本では初の試みから生み出されたものです。さらにメディアやプロモーションを通して、大会の様子やその意義が、日本全国をはじめ、世界に発信され、大きな手応えを得ることができました。
(1) 未来を担う子どもたちへ:中学校、高等学校への出前教室
VNL2024福岡大会に連動して、福岡県内の中学校、高等学校46校(中学校26校、高等学校17校、中高一貫校2校、特別支援学校1校)の生徒を対象に、バレーボールの体験教室が実施されました。
日本代表選手のOGや福岡県で活躍するバレーボールチームの選手を講師に迎え、現役選⼿のプレーを⽬の当たりにし、バレーボールの魅⼒を感じてもらうとともに、地元チームとのつながりを感じる機会を創出し、地域のスポーツ振興が推進されました。
これは、第Ⅱ編2.(3).ⅱ)で述べましたが、SDGsの各項目の実現と子どもと深く関わりがあります。SDGsの視点で、国際協定である「子どもの権利条約」を眺めると、18歳未満(未成年者)の人たちは、すべて子どもとしての権利が守られなければならない、とされている条約の内容が、スポーツ振興にとどまらず、子どもの権利として、子どもが広く社会とのつながりを持つことを大人は保証する義務があることを再認識させてくれました。そして、SDGsの実施に当たり、高校生以下の子どもたちの大会観戦料を子ども料金にしたことなど、「子どもの権利条約」との整合性を持たせたことは、注目に値すると思います。
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子どもたちを学校という限られた環境に留めることなく、広く現実の社会と接する機会を大人たちが与えることは、子どもの未来のためだけではなく、現実社会と接することが、子どもが現在持っている権利であること(「子どもの権利条約」)を認識し、そのことを子どもたちに伝え、その権利を守る義務が大人にあることを、子どものためのSDGs施策に特に力を入れた本大会は教えてくれています。
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(2)シティードレッシング
地元開催の意識を盛り上げるために、小倉の街全体をVNL2024福岡大会一色に染める広告展開「シティードレッシング」が実施されました。
この取組は福岡県と北九州市の協力によって実現したもので、街と大会の一体感を高める仕掛けの一つとなりました。
JR小倉駅、モノレール各駅、商業施設、市役所、区役所、体育館、小学校、中学校、高等学校、大学など、ありとあらゆる場所にポスターが掲出されました。
大会期間の約2週間、シティードレッシングで演出された街は、大会Tシャツを着たファンやスタッフであふれ、大会の雰囲気を一層盛り上げました。
(3)大会のレガシー
1)レガシーボール
VNL2024福岡大会最終日に、大会の成功を記念して、また、未来を担う子どもたちのスポーツを通じた健全な育成への願いを込めて、実際に大会で使用された試合球の贈呈セレモニーが行われました。FIVB/VWから、服部誠太郎福岡県知事と香原勝司福岡県議会議長に贈呈された試合球は、バレーボール部がある県内の高等学校等151校へ寄贈されました。
2)代表選手のサイン入りモニュメント
男女日本代表選手42名の直筆サインが記されたモニュメントが作成され、福岡県庁1階ロビーに、大会で使用された公式球と共に展示されました。
3)専門学校への寄付
今大会に出場した全選手が使うほとんどのトレーニング機材の貸与に応じた『九州医療スポーツ専門学校』に対し、大会組織委員会から新品のトレーニング機材が贈呈されました。
4)バレーボール国際強化拠点設置に向けたMOU締結合意
2024年9月4日、福岡県、FIVB、オセアニアゾーンバレーボール連盟(OZVA※)、JVAは、アジア・オセアニア地域の若い世代を対象に、バレーボールの普及・振興を目的とした国際強化拠点を福岡県に設置することに合意しました。
服部誠太郎福岡県知事は、ワンヘルスの理念の発信などの新しいチャレンジで高い評価を受けた『VNL2024 福岡大会』を振り返るとともに、「今回のMOU締結合意を踏まえ、世界に選ばれる福岡県に向けてさらに一歩進めてまいりたい」と述べました。
※OZVA:オセアニア地域20か国のバレーボール競技連盟を統括
5)VNL記念ママさんバレーボール大会
2024年10月に開催された第62回北九州市民スポーツ大会ママさんバレーボールの部は、VNL2024福岡大会を記念して、『バレーボールネーションズリーグ2024 福岡大会 北九州市開催記念』と題して開催されました。
(4)プロモーション
本大会では、VNL日本で開催された大会としてはかつてないほどの大規模なプロモーション施策、大型キャンペーンが、福岡県、北九州市、テレビ局、チケッティングプロバイダー、ロジスティックプロバイダーはじめ、すべてのステークホルダーが力を結集し、実施されました。
1)「ハイキュー‼︎」との特別コラボレーション
VNL2024福岡大会は、2024年に全世界で公開され、若年層を中心に世界中のバレーボールファンを魅了しているアニメーション映画「劇場版ハイキュー‼︎ゴミ捨て場の決戦」とのコラボレーションを実現させました。
大会公式ポスター、大会公式プログラムの表紙には、胸にVNLロゴマークの入った作者描き下ろしの「ハイキュー‼︎」主人公の2名が登場し、大会公式グッズも作成され、若年層のバレーボールファンを巻き込むことに成功しました。
「ハイキュー‼︎」とのコラボレーションは、VWの長年の夢でもあり、今大会でそれが実現したことで、今後さらなるコラボレーションへの発展に期待が寄せられています。
2)広範なプロモーション
今大会では、福岡県、北九州市、イープラス、TBSなどの協力を得て、広範囲に渡ってプロモーション展開が実施されました。
① 全国への展開
地上波、BSを使ったテレビCMを投下して広くアプローチ。VNLのCM放送は史上初の試みとなり注目を集めました。
また、日本におけるVNL大会初のタイトルスポンサーである買取専門店「買取大吉」の全国約1,000店舗(大会当時)において大会ポスターを掲出。これにより大会の認知度は大きく向上することになりました。
② 福岡県を中心とした九州エリア
6,500枚の大会ポスターと20,000枚のフライヤーを制作。福岡県と北九州市の協力のもと、県内の小学校、中学校、高等学校、大学をはじめ、市役所、区役所、体育館、図書館、大型商業施設、駅など、ありとあらゆる場所での掲出・配布がなされました。
また、福岡県、熊本県、沖縄県、佐賀県、長崎県、大分県のバレーボール協会やママさんバレーのネットワークを通じて、九州全土にポスターが掲出されました。
さらに、野球場や劇場、コンビニエンスストアでのプロモーションも実施。ファミリーマートでは、関西・中四国・九州・南九州・沖縄など広範囲にわたって大規模なキャンペーンを展開し、大会への期待感を醸成するとともに、チケットの販売促進にも成功しました。
市政だよりなど、地元密着型の広報誌や、新聞・ラジオを活用した広報活動も非常に効果的でした。
ウェブも積極的に活用されました。公式SNSの発信に加え、イープラスの様々な販促ツールからの発信により、多くのスポーツファン、エンタメファンにリーチすることができました。
(5)メディアによるVNL2024福岡大会
大会期間中、国内外のテレビ、新聞、ウェブを通じてたくさんの報道が行われました。特に国内でのTBSでの放送は高い視聴率を記録しました。
また、Volleyball TVによる国際映像配信も行われ、世界中のファンが熱戦を楽しむことができました。
① テレビ放送・国際映像
1)国内テレビ
TBS地上波ゴールデンタイム、BS-TBSで、男女日本戦全試合が放送され、連日高視聴率を記録しました。
2)国際映像配信
Volleyball TV (VBTV)による国際映像配信も実施され、世界中に熱戦の模様が配信されました。
3)メディアの会場取材
大会会場には、国内メディアは、全国各地から約80名もの取材陣が訪れました。海外メディアは、トルコ、ポーランド、韓国、カナダ、オランダから12名が来日しました。
② 報道
今大会の試合結果や話題は、全国のテレビ、新聞、ウェブで、連日大きく報じられました。
TVでは東京キー局で255番組、福岡ローカル局で26番組、Webでは15,296記事の露出がわずか3週間の間にありました。
これら多数のメディア露出により、約302.5億円という脅威的なパブリシティ効果を実現できました(対象期間6/1~21)。
③ NHK WORLDでのドキュメンタリー番組放送
本大会のドキュメンタリー番組が、2024年10月4日(金)、NHK WORLD-JAPAN/jibtvで「新しいスポーツ世界大会への挑戦〜バレーボールネーションズリーグ2024福岡大会〜」と題して放送されました。本大会自体の報道もさることながら、この番組についての報道も多く、バレーボールへの注目度とともに、地方自治体とタッグを組んだSDGs推進事業としての新しいスポーツ大会への注目度の高さを示しているといえるでしょう。
2. 経済波及効果
VNL2024福岡大会は
大会期間 13日間
大会会場 1会場
参加国 日本+15カ国(選手計443人)
<男子チーム>
アルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、カナダ、キューバ、フランス、ドイツ、
イラン、イタリア、日本、オランダ、ポーランド、セルビア、スロベニア、トルコ、アメリカ
<女子チーム>
ブラジル、ブルガリア、カナダ、中国、ドミニカ共和国、フランス、ドイツ、
イタリア、日本、韓国、オランダ、ポーランド、セルビア、タイ、トルコ、アメリカ
観客 84,521人
という規模で開催されました。
そして、本大会での経済波及効果を北九州市で算出した結果、
北九州市だけで 23億7,800万円
福岡県全体では 36億800万円
(北九州市都市ブランド創造局からの報告書)
また、テレビ、新聞、ウェブなど多数のメディア露出により、
パブリシティ効果 302億5,000万円
(ニホンモニター株式会社による調査報告)
という驚異的な経済効果を実現しました。
これは、「大規模国際スポーツ大会」を「SDGs推進事業」として企画実行したことで生み出された「持続可能な事業」の大きな成果の一つであると言えます。
航空写真:Google Earthより
資料提供:VNL2024福岡大会組織委員会(SDGs部門)
文責:あおやま あきら