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青栁幸利氏へのインタビュー -その1- 群馬県中之条町について

青柳幸利氏 (AY)

未来投資研究所:青山あきら (聞き手 AA)

運動、特に歩くということが、健康維持にとって重要であることは、広く認識されていますが、このことに対する確固たる科学的根拠を与えたパイオニア的研究の一つに、「中之条の奇跡」と呼ばれ、日本はもちろんのこと、世界中に多大な影響を与えた研究があります。この研究は、群馬県中之条町の65歳以上の全ての住民に対して、20年以上にわたって、現在も継続して行われている疫学的研究で、運動量とほとんど全てのメジャーな病気の間にあるおどろくべき関係が明らかにされました。本日は、科学的研究のSDGsにおける役割に注目して、この中之条における疫学的研究を率いておられる東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利先生に、お話を伺います。

【そのI】 群馬県中之条町

【そのII】 研究遍歴
スポーツ医学
湾岸戦争とカナダでの研究
コソボ問題でアメリカでの就職内定取り消し
帰国
東京都老人総合研究所:自然科学から社会科学へ
故郷で疫学研究

【そのIII】 中之条研究
生活習慣を活動計で測るという独創的研究
日常生活の数値化:2つの軸で人間の行動を表現
最初の発見
日常身体活動と病気の関係
病気の発症のメカニズム
病気の予防法
老化と活動量と病気の間の因果関係
老化のコントロール
比較するという科学の原則

【そのIV】 SDGs

【エピローグ】

 

I 群馬県中之条町

AA: まず、青栁先生が生まれ育たれた中之条という町についてお話ししていただけますか。

AY: 実はそんなに、自分の故郷について、詳しい訳ではないんですけど、私が生まれ育った頃っていうのは、人口が2万人ちょっと、そんなちっちゃな町で、数年前に、隣の村、六合と書いてクニムラと読むんですが、ふたつ合わさって面積が倍くらいになって、ただ人口はほとんど増えないっていうような感じで、今1万6千人弱ぐらいになってるんですよね。隣町が草津町っていう、草津温泉で有名な町で、群馬県の北西部にある、どこにでもある田舎町っていう感じの町ですね。八ッ場ダムっていうのが、民主党政権で問題になりましたでしょ?あれがあるっていうのを、研究を始めてから知るぐらい、全然地元の政治や経済、文化、そういうものに疎くて、ほとんど知らないような感じでした。

AA: 先生のご研究は、運動と健康ということが主題ですが、80%以上が森林で、山の中の盆地という中之条町は、例えば東京とか、平らな町と比べて、特殊っていうことはないんでしょうか。

AY: 私もそう思っていたんですけど、盆地であるので、そこで暮らす人たちにとっては、ほとんど平らなんですよね。なので、東京と田舎との交通機関が、全然違うとかっていうこと以外であれば、普通に生活する分には、あまり変わりはないかなと。。

AA: 先生のご研究で、65歳以上の全ての方に協力いただいた、しかも、長年に渡ってですよね。普通の市町村じゃ、あまり考えられないように思うんですけど。

AY: はい、もう、全員、名簿にある、住民である方には、全員、実態調査みたいな形で。これも、非常に奇跡的なことだと思います。研究ができていること自体が奇跡的だなーと、今でも思います。海外からは、宗教団体か、と言われることもあります。欧米では、とても考えられないような研究スタイルなので。それが、この研究の特色かもしれないですね。

〈-そのII-につづく〉

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