VNL2024福岡大会(*)の意義に関する連載の第2回目は、試合会場となった北九州市・西日本総合展示場の特徴と構造を土台としたSDGsへの取り組みを見ていきます。
* 「買取大吉 バレーボールネーションズリーグ2024福岡大会」(VNL2024福岡大会)2024年6月4日から16日にかけて約2週間にわたって福岡県北九州市で開催
<目次>
1. 北九州市・西日本総合展示場:環境問題
大規模国際スポーツ大会の環境問題を一挙に解決
(1) 大規模国際スポーツ大会特有の環境問題とその対策
(2) 環境破壊問題を一挙に解決した会場施設とその立地条件
2. 西日本総合展示場の構造:SDGsの全ての目標達成のために
環境保護だけがSDGsではない
(1) 仮設会場を設置するということの意味
(2) 会場設置(ハード面)
(3) 会場利用(ソフト面)
1. 北九州市・西日本総合展示場:環境問題
<大規模国際スポーツ大会の環境問題を一挙に解決>
(1) 大規模国際スポーツ大会特有の環境問題とその対策
大規模国際スポーツ大会の開催は、第Ⅰ編で触れたSDGsの入れ子構造【人 ⊂ 社会 ⊂ 環境】の大元である環境に悪影響を与える負の側面が多々あり、大きな問題になっています。
VNL2024の日本大会では、まず、この環境問題を取り上げ、大規模スポーツ大会が与える環境への悪影響としてメインに指摘されている以下の3点について新たな取り組みが企画されました
1) 会場施設に伴う環境破壊
2) 食品ロス
3) ゴミ処理
VNL2024の日本大会の開催地には、これらの環境対策を実行するのに適した試合会場があることが求められます。
VNL2024の日本大会の主催者である国際バレーボール連盟(FIVB)/Volleyball World(VW)が選んだ、SDGsを推進する国際スポーツ大会(SDGs国際スポーツ大会)にふさわしい環境を持つ開催地は、ワンヘルスを推進している福岡県の中で、すでにSDGs未来都市として活発に活動している、北九州市でした。
しかし、北九州市には、大規模国際バレーボール大会を開催できるような大きなスポーツ施設はありません。
その代わりに、小倉駅から徒歩5分に位置する西日本総合展示場という多目的会館として市民に盛んに利用されている大きな会館があり、この会館がVNL2024の日本大会の会場として利用されることになりました。ここに「買取大吉 バレーボールネーションズリーグ2024 福岡大会」(VNL2024福岡大会)が誕生したのです。
福岡県/北九州市が開催地に選ばれた大きな理由の一つは、この西日本総合展示場の構造と立地条件が、VNL2024福岡大会で策定された環境対策を実行し、大規模スポーツ大会特有の環境問題を一気に解決するのに理想的であることです。
(2) 環境破壊問題を一挙に解決した会場施設とその立地条件
大規模国際スポーツ大会の開催には、
① 試合会場 試合コート、観客席など
② コンディション調整設備 練習場、トレーニングジムなど
③ ホテル 選手団、スタッフたちの宿泊など
の3施設が最低限必要です。通常の大会では、これらの3施設は互いに離れた場所にある場合が多く、それらの施設間の往復にはバスなどの移動手段が使われています。
VNL2024福岡大会の試合会場に選ばれた北九州市・西日本総合展示場の隣接する新館と旧館は、①試合会場と②コンディション調整設備として利用でき、そこから徒歩2分のところに③ホテル<リーガロイヤルホテル>があり、上記①〜③の全ての施設が、徒歩数分以内の圏内集まっています。
この3施設に加えて、その近隣には、
④ 小倉駅 メインの交通手段
⑤ 駅ビル周辺の商店街 食事、ショッピングなど
⑥ あさの汐風公園 市民の憩いの場・イベント会場
といった、大会に関連する諸々の施設が、これもすべて徒歩圏内に集まっています。
この立地条件は、先に挙げた大規模スポーツ大会開催に関わる3つの環境破壊の弊害を、以下に述べるように、期せずして一挙に解決しました。
1)既存施設の利用
西日本総合展示場は、新旧の2つの会館が隣接しており、多目的に利用されるように、内部は広くオープンスペースになっています。
本大会では、この旧館に、試合コートと観客席を含むメインの試合会場(写真の「メイン会場」)を、新館に試合前後の選手のコンディション調整のための、練習コート、トレーニングジムなどの大会関連施設(写真の「トレーニングルーム」)を、一箇所にまとめて仮設構築しました。
このことにより、大会施設の新設、増設、改築、再開発などに伴う大規模な環境破壊が回避されました。
2)仮設会場の設営
大会施設は、再利用、リサイクル可能な資材を用いて仮設されました。
仮設会場設営は、大会9日前から着工が始まり、約8,000席という大規模な仮設観客席を設営するため、10トントラック25台分のパーツが約200人のスタッフによって組み上げられました。
この会場施設は、大会終了後速やかに撤去され、用いられた資材は再利用、リサイクルに回されました。
このことにより、循環型の大規模国際スポーツ大会施設が実現しました。
3)仮設会場設営に伴うCO2排出
施工会社が率先して本大会のSDGsの取組に協力し、10tトラック25台分のパーツについて、通常なら千葉から北九州までトラックで輸送するところを、貨物鉄道へのモーダルシフトにより、CO2排出量を18.573トンから4.033トンと、14.540トン(78%減)もの削減に成功しました。
4)選手団・スタッフ・観客の、試合会場、トレーニングセンター(コンディション調整施設)、ホテルなどの施設間の移動が歩いてなされ、バスなどの交通機関使用によるエネルギー浪費が防がれました。
5)のちに述べるように、食品ロスとゴミ処理による環境破壊も、試合会場と、隣接公園、駅、駅ビル、商店街などが、徒歩圏内に集まっているという、好立地条件に基づいたSDGs遂行施策によって、見事に解決しました。
以上のように、西日本総合展示場の構造と立地条件が、大規模スポーツ大会に関わる全ての環境破壊問題の解決へと導きました。
2. 西日本総合展示場の構造:SDGsの全ての目標達成のために
<環境保護だけがSDGsではない>
SDGs推進事業としてVNL2024福岡大会が企画された際、西日本総合展示場の構造と立地条件は、福岡県が積極的に推進するワンヘルスとも相まって、環境問題を解決するのみならず、SDGsの17のすべての目標に関連する施策を実行するのに、非常に適していることが大会主催者たちに認識されました。この好立地条件を最大限に利用することによって、本大会は大規模国際スポーツ大会をエポックメイキングなSDGs推進国際スポーツ大会に押し上げることに成功しました。
この成功のキーワードは、SDGsの17の目標を全て達成する、です。すなわち、SDGsの理念が、スポーツ大会という個別的な事業レベルで文字通り実行され、スモールスケールでの持続可能な社会が実現したのです。
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本大会の様々な取組とSDGsの17のそれぞれの目標との関連は、本連載の最終編のまとめの最後に掲載しています
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(1) 仮設会場を設置するということの意味
隣接する新館と旧館からなる多目的会館である西日本総合展示場を国際バレーボール大会の会場に仕立てるためには、そこに仮設の施設を建造しなくてはなりません。発想を変えてみると、それは、大会のビジョンであるSDGsのすべての目標を実現できるように、会場を自由にかつ独自にデザインできることを意味していました。さらに同じ発想で、その会場の使い方も、大会のビジョンであるSDGsのすべての目標を実現できるように自由にかつ独自にデザインできることを意味していました。
そこで以下に、会場設置というハードな面と、その使い方というソフトな面の両方から、多目的会館西日本総合展示場がいかにしてSDGs推進国際バレーボール大会会場に変身し、その結果達成されたSDGsの諸目標の様子はどんなものだったのかを見ていきます。
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<西日本総合展示場の特徴とその意義>
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多目的会館 自由な手作り建設 SDGs全目標を入れ込む
旧館と新館 試合会場とサポート施設 アスリートファースト
ホテル等関連施設 全関連施設が徒歩圏に集合 大会と地域の一体化
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(2) 会場設置(ハード面)
1) SDGs推進国際スポーツ大会会場への変身
西日本総合展示場は、目の前に互いに向かい合う近接した新館と旧館に分かれています(写真のメイン会場とトレーニング場)。
本大会では
(A)旧館→ 試合コートと観客席などのメイン試合会場
(B)新館→ 試合前後の選手のコンディション調整のための、
練習コート、トレーニングジム、スタッフたちのための諸施設などの大会関連施設
(C)旧館と新館の間→ 選手と市民が接触するファンゾーン
が仮設構築されました。
2) 西日本総合展示場の構造とレイアウト
VNL2024福岡大会の大会会場に生まれ変わった西日本総合展示場の図面を下に示します。
上部がトレーニングルーム等のある大会サポート施設が設営された新館、下部が試合コートと観客席のあるメイン会場となった旧館、その間に選手たちの移動通路とファンゾーンが設置されています。(詳しくは、図を拡大して見てください)
3) 各会場のレイアウトとそのSDGs施策
(A) 旧館(メイン試合会場): 選手と観客の一体化
旧館には、試合コートと、8,000余の観客席からなるメインのバレーボール試合会場が設営されました。そのデザインは全て、試合の盛り上がりとSDGsの遂行が両立するようにとのさまざまなアイデアでもって設計されています。
(「(1) 仮設会場を設置するということの意味」に示したオープンスペースの会場写真と比べて見てください)
i)スタンドの角度や座席のレイアウト
どの座席からもコートを見やすくし、全ての観客に、より迫力ある試合を楽しんでもらえるようデザイン。結果、後方の座席でもコートを間近に感じることができるなど、選手と観客が一体となって試合が進行する理想的なスポーツ大会が実現されました。
ii)エキサイトシート
今までにない、コートのすぐ近く、客席の最前列に特別体験付きのVNLエキサイトシートが用意されました。まるで選手と一緒に試合をしているかのような臨場感を感じられる、文字通り「エキサイティング」なシートとなり、選手の熱気と躍動感を感じられる特別体験が提供されました。
iii)プレミアムシート
コートのすぐ近く、スタンド席の最前列にプレミアムシートが設置されました。すぐ目の前で試合が進行し、文字通りプレミアムなシートとなりました。
iv)ウェルカム体験
試合会場に入場する選手に、すぐ近くから声援を送るゾーンが設置されました。
これらの試合会場デザインは、選手と観客が間近に接し、一体となって、試合が進行するようになされ、結果、最高のスポーツ大会経験によるスポーツの持つ喜びと平和の感覚を選手と観客の全員が享受することとなりました。
v)スクリーンと廃棄物回収用各種ボックス
会場に設置されたスクリーンでは、試合進行の映像と共に、本大会がSDGs遂行大会であること、食品ロスやゴミ処理などの環境対策、応援のためのバルーンスティックのリサイクル回収などのリクエストなどが映し出され、アナウンスもあり、廃棄物回収用の、リサイクルボックスなどの設置とともに、SDGsと環境保護への周知が実行されました。
vi)観客向けトイレなど会場内の至る所に「ワンヘルス」
また、会場内の至る所で、福岡県の花きを使⽤した装飾が施され、ビクトリーブーケによる特産品PRなど、開催県のPRとともに、ワンヘルスの取り組みが紹介されました。
(B) 新館(トレーニングルーム他): アスリートファーストと観客
試合コートと観客席のある旧館と隣り合う新館には、以下のような、選手たちのサポート、スタッフ、メディア関連、観客の特別プログラム等のための諸施設が設置されました。
① 練習コート
② トレーニングジム
③ ロッカールーム
④ ビクトリーブーケ手渡しスペース
⑤ スタッフラウンジ
⑥ スタッフ専用マッサージスペース
⑦ 特別体験チアゾーン
⑧ カジュアルラウンジ
⑨ お見送りエリア
⑩ メディアラウンジ
①+②:練習コートとトレーニングジム
選手が試合前の調整や体調管理に使用する練習コートとトレーニングジムを、試合会場(旧館)と通路(ファンゾーン)を挟んで隣り合っている新館(本館)内に設置することで、選手に対して、移動の負担を減らし、利便性を高め、精神的、肉体的に、選手たちをサポートするアスリートファーストが徹底され、選手たちから大好評を得ました。
トレーニングマシンは、FIVBの規定で器具の種類から重量、数量まで厳密に決められていたため、短期間で揃えるのは非常に困難と思われました。しかし、地元の「九州医療スポーツ専門学校」の全面的な協力により、そのほとんどが貸与され、足りない分は福岡県の公共施設からの貸与と購入品で賄われました。
同時に、このスポーツ専⾨学校の生徒たちには、各国の選手たちのトレーニングを見学するなど、選手たちとの交流の機会がつくられ、今後のスポーツトレーニングのためのまたとない経験と学びの場ともなりました。
③+④:ロッカールームとビクトリーブーケスペース
後に述べるように、本大会では福岡県内の小学校25校から合計1,512人の小学生が招待されました。この子供たちと選手たちの触れ合いの機会の一つとして、ロッカールームに隣接して、試合後に選手にビクトリーブーケを贈る場が設けられました。
⑤+⑥:スタッフラウンジとスタッフ専用のマッサージ室
スタッフラウンジに隣接して設けられたスタッフ専用のマッサージ室では、地元のプロのトレーナーや整体師による無料マッサージのサービスがあり、連日試合の裏方として奮闘しているスタッフたちの心身の健康管理が地元の協力で実現しました。
特別体験付きセットパッケージ用の施設
日本で開催されるバレーボール国際大会では初めての試みとして、特別体験パッケージが用意され、参加者から「料金以上の価値があった!」との感動の声が多く寄せられました。
⑦:特別体験チアゾーン
試合終了後の選手がロッカールームに向かう導線上に、特別体験パッケージ購入者だけ入ることができるエリアが設置されました。ここでは、多くの選手が、熱心なファンに応え、握手や写真、サインなどのリクエストに応じていました。
⑧:カジュアルラウンジ
ゆったりとくつろげる広い空間で、軽食や飲み物を楽しんでいただくラウンジが、特別体験プランの購入者のために設営されました。ステージでは、元女子日本代表選手によるトークショーも行われ、会場は大いに盛り上がりました。なお、この特別体験プランは、試合観戦をしない人たちでも購入することができました。
⑨:お見送りエリア
会場(旧館)内の駐車場からバスで移動する日本代表選手たちを間近で見送り、声援を送るスペースが設けられました。
⑩:メディアラウンジ
大会期間中、国内外のテレビ、新聞、ウェブを通してたくさんの報道が行われ、大会を盛り上げるとともに本大会の画期的取り組みであるSDGsを旗印にしたFIVB/VWと福岡県/北九州市のコラボレーションによる地域と一体化した国際スポーツ大会の有り様と意義が、広く全世界に発信されました。この中核を担うメディアの人たちのラウンジが、この新館に設置されたことは、大会の全貌を肌で感じてもらうために、有効に働いたと思われます。
(C) 旧館と新館の間(ファンゾーン): 選手たちと市民を繋ぐ
メイン試合会場(旧館)とトレーニングルーム(新館)とは隣り合っておりその間は屋外となっています。本大会では、両館の間に通路を設け、ファンゾーンとして一般公開し、チケットを持っていない人も選手と触れ合うことのできる場を設けました。
選手たちは、市民たちが詰めかけたファンゾーンの通路を通って新・旧両館を行き来します。その間、選手たちと市民は対面で交流するという、今までにない場が提供されました。この初めての試みは、試合観戦の観客以外の一般市民も広く選手たちと直に接する機会を作り出し、「我が街の国際スポーツ大会」を実感させ、大好評を博しました。
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以上のように、SDGsのすべての目標遂行につながる西日本総合展示場での会場デザインは、選手のモチベーションを高め、きめ細やかな選手やスタッフたちのコンディション管理を提供するとともに、最高のバレーボール大会の開催を可能にし、様々な形での選手団とスタッフと観客・地元民の絆の創生を可能にし、「地元のスポーツ大会」という意識を強めることができました。
(3) 会場利用(ソフト面)
次に、この会場を利用して達成されたSDGsの目標というソフトな面を見ていきます。
1) 観客席を埋める観客へのSDGs
本大会は、日本国内で開催されたVNLの大会としては、過去最高の観客数84,521人を記録しました。
エキサイトシートなど臨場感を堪能できる座席設定に加え、特別体験付きプランやVIPラウンジも大好評を博しました。また、地元特産品を生かした地産地消の推進イベントも開催し、観客に福岡の魅力を伝える機会となりました。
i) 様々な種類の入場券と料金
特別体験プラン
エキサイトシート+特別体験
プレミアムシート・サイド+特別体験
プレミアムシート・エンド+特別体験
特別体験のみ(観戦チケットなし)
日本戦観戦チケット
プレミアムシート:S(サイド、エンド)、A(サイド、エンド)
指定席:S、A、B(各サイド、エンド)
親子席:A、B(各サイド、エンド)
ファミリー席:A、B
日本戦以外観戦チケット(日本戦観戦チケット料金の最大20分の1以下で提供)
エリア内自由席
ii) 子ども観戦料金の設定
バレーボールネーションズリーグ(VNL)は⾝近で開催される大規模国際スポーツ⼤会で、バレーボールの普及を⽬的に、男⼥各3カ国を転戦しています。
VNL2024福岡大会では、⽇本で世界のトップアスリートの試合を⽣で観戦できる貴重な機会を、より多くの⼦どもたちが享受できるように、価格設定の配慮がなされました。
スポーツ競技会の観戦チケットは、⼦ども料⾦については⼩学⽣以下を対象とするか、⼈気がある試合には設定がない場合が⼀般的ですが、今⼤会では、すべての試合において、⾼校⽣までを⼦ども料⾦(*)(未就学児は膝上無料)として実施されました。
(*)第Ⅳ編で詳しく述べますが、SDGsの各項目の達成には、子どもへのアプローチが大きく関わっています。高校生以下を子ども料金に含めたことは、締約国・地域が最も多い国際協定である「子どもの権利条約」において、子どもとは、18歳未満の全ての人たちのことである、と規定されていることを思い出させます。本大会での「子どもの権利条約」と整合性を持つこのSDGsの試みは、今後、特に注目すべきことと思われます。
「子どもの権利条約」
1989年11月20日に国連総会にて採択
1994年4月22日に日本批准(締約)
iii) 日本対外国、外国対外国の別料金
これまで国内で開催されるバレーボールの国際大会では、同じ会場で1日に2〜3試合が組まれる場合でも、主催者側が日本代表戦の販売だけを想定した「1日通し券」が一般的でした。そのため、チケットは日本代表戦を観る観客で完売してしまい、同じ会場の「外国チーム同士の試合」の観客席は空席となることがありました。
そのため、出身国の応援にやってきた外国人家族にとっては、観客席はガラガラであるにも関わらず観戦できなかったり、日本戦のために高額に設定されたチケット代が全家族分は支払えず、人数を絞ってチケットを購入して観戦したりするような事態を招いていました。また、たとえ世界トップクラスの注目の試合であっても、外国チーム同士の試合の場合、彼らのファンが観戦しにくい状態になっていました。
iv) 外国戦単独販売
そこで、今大会では、チケット会社、開催自治体との協力の上、日本代表戦と外国チーム同士の試合を分けて販売することにし、ⅰ)で示したように、日本戦以外の外国チーム同士の試合は料金を下げることで、どのバレーボールファンも観戦しやすい設定が行われました。
その結果、大会を通じて全試合に多くの観客が訪れました。いくつかの試合では、外国チーム同士の試合でも満員になり、FIVB関係者からも「日本で外国チーム同士の試合が満席になるなんて初めてだ」と、高く評価されました。何より、多くの観衆の前で試合ができた選手たちに大変喜んでいただけたことは、彼らのモチベーションを高め、連日白熱した試合が繰り広げられる結果にもつながったと考えられます。
v) 子どもたちの観戦招待
福岡県内の⼩学校から合計1,512⼈が招待され、さまざまな国からの選手たちによる真剣勝負を⽣で観戦してもらい、スポーツの魅⼒である感情を揺さぶる瞬間を感じてもらう機会が提供されました。また、試合後に選⼿へビクトリーブーケを贈るなど、選⼿とのふれあいの場も設けられました。これらの機会が、⼦どもたちの成⻑と多様性の理解につながることを願って提供されました。
2) 各種ラウンジでの地産地消の推進と地元特産品等のPRによる大会と地元の交流
福岡県産⾷材の利⽤拡⼤の促進、地産地消(福岡県「ワンヘルス」基本⽅針06)の推進として、びわや無花果、巨峰という旬の果物が福岡県より提供され、VIP、特別体験の観客など各種ラウンジで振る舞われました。ラウンジ内にはこれら果物の紹介ポップ等が出され、福岡県特産品のPRが実施されました。また、福岡県産花きのPRなど、開催地の広報も推進されました。
合わせて、福岡県で産出額全国3位となる花きを、各種ラウンジ、観客向けトイレに飾り、選⼿らに試合後にビクトリーブーケを贈るなど精⼒的な広報活動がきめ細やかになされました。
なお、ビクトリーブーケは地元のこどもたちから選⼿に⼿渡すなど、交流の場がさらに創出されました。
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以上、VNL2024福岡大会の会場である西日本総合展示場のレイアウトとそれに同期した数多くのユニークで新しい試みとその成果を見てきました。これらが本大会の掲げる「SDGsの全ての目標達成」とどのようにリンクしているかは、連載の最終回である「IV 福岡県とのパートナーシップによるSDGsとまとめ」の最後にまとめます。
航空写真:Google Earthより
資料提供:VNL2024福岡大会組織委員会(SDGs部門)
文責:あおやま あきら