2019年度全日本ジュニア新体操選手権大会 – 1位:神埼ジュニア新体操クラブ
新型コロナウィルスの感染拡大に伴って、各種の大規模スポーツ、イベント等が中止ないしは延期の状況が続いています。
その中で最も大きな影響を受けたのが、学生の全国大会(地方大会)です。著名なところでは、「春と夏の甲子園」や「国体」などが中止となり、これを目標にがんばってきた学生たちの落胆は大きいものがあります。特に高校3年生にとっては、自分が今までやってきたスポーツ人生の集大成とも言える大会が中止となり、結果もさることながら、自分たちが努力してきた経過を表す機会をも奪われたことは、その心中を察して余りあるものがあります。特に、身近で、そういった学生の姿を見てきた学校の先生、指導者、大会関係者は、何とかしたいという思いが日増しに強まっています。今でも、交流試合など、形を変えながらも大会を実施する努力がなされています。
さて、ここに男子新体操という競技があります。現在、全国に100校ほどのクラブがあり、例年であれば、ブロックごとの予選を勝ち抜き、全国23校の高等学校が決勝でその演技を披露していたことでしょう。力強いダイナミックな動きと繊細さが組み合わされた男子新体操は、初めて見る者でも引き込む魅力があります。まだ競技人口は1420人と、さほど多くはありませんが、日本発祥の競技であり、近年では、知名度も高まり、世界的に注目されて来ています。ロシアやアメリカ、ドイツ、インドネシア、さらには遠くメキシコ、ブラジルなど、他国でも男子新体操への参加者が増えてきており、ゆくゆくは世界大会を催し、さらにはオリンピックの正式種目に採用されることをめざして、関係者が一歩一歩実績を積み上げていたところでした。
そのようなときに、このコロナ禍が降りかかってきたのです。組織も財源もあるようなスポーツ団体であればいざ知らず、知名度が上がってきているとはいうものの、まだまだ競技人口が多くはなく、財源もこれからという男子新体操です。中止になった大会に代わる何かをすると言っても容易ではなく、思いはあるものの、あきらめていたのが正直なところでした。
これらの関係者の思いを受け止め、大会の実現に向けて動き始めるきっかけを作ったのが、テレビ朝日と株式会社CBのLIVE-Link 事業部だったのです。CBは、行政コンサルタントをメインビジネスとしていますが、スポーツとも深いかかわりを持っている会社です。フィギュアスケートなどの世界大会レベルの大会でのマーケティングを手掛ける一方、世界で最も歴史が古い国際体操連盟のオフィシャルエージェントにもなっています。
CBのLIVE-Link事業部では、TV局のネット生中継で好評を得ているノウハウ・人材・技術を活かして、「クオリティの高い生配信」を提供しています。人生の様々な場面を生配信することで、実際に参加できる人数以上の方々と、素晴らしい瞬間や、美しい空間、華やかな演出、熱い戦いを共有することができます。文化や季節行事、スポーツイベント、競技、学校行事、結婚式、どのような場面でも配信を可能にし、より多くの人に感動を届けることを目指して、事業を展開しています。
また、テレビ朝日は、キー局として様々な人気スポーツを取り上げているのはむろんですが、選手たちが競技に至るまでの舞台裏にも関心を払うなど、地道な取材活動を続けており、スポーツへの理解を深めるため、ドキュメンタリーから特集番組まで広く制作、放映しています。
新型コロナウィルスの影響を大きく受けているスポーツ界の状況に対して関係者が心を痛める中、テレビ朝日で男子新体操のドキュメンタリーを手掛けていたプロデューサーが、男子新体操についても、他の競技と同じように全国大会を開催できないという厳しい状況におかれていることを会う人ごとに話していました。そんな折も折、テレビ朝日に、別のスポーツ関連の打ち合わせで来ていたCBのメンバーがその話を耳にしたのです。その打ち合わせの場において、本題もそこそこに、これを何とかしなければいけない、いや何かできないかとの話が盛り上がりました。
もともと、今回のコロナ禍で各種のスポーツ大会が中止・延期になり、その選手たちの思いを何とかしたいと考えていたこれらのメンバーは、テレビ朝日とCBが組んで、CBの持っているLIVE-Link事業部が持つライブ配信機能を使ってオンラインで全国の会場をつなぐことによって大会を実施できないものかとの発想を持っていたのです。これであれば、大掛かりにならず、また多額の費用もかけずに中継による全国大会ができるかもしれない・・・
一方で、男子新体操を振興する立場にある日本体操協会においても、コロナ禍に合って厳しい状況に置かれている男子新体操の選手たちが何とかして競技できるようにしたいとの思いがありました。ミーティングのメンバーはさっそく、日本体操協会の関係者に、男子新体操の大会実現のため、CBとテレビ朝日が持てるものをもって協力したいとの思いがあると伝えました。すると、選手たちのために、皆の力を合わせて実現しようとの思いで一致したのです。
日本体操協会では、これら関係者の熱い思いを受け止め、このオンラインによる大会を、体操協会の主催による全国大会として実施することを検討することとなりました。その結果、後日の理事会での議論を経て、正式の大会として認めることとなったのです。テレビ朝日においても、番組として成立するかどうか検討することとなりました。その結果、テレビ中継として価値のあるエキシビションの実施と組み合わせることにより、このプロジェクトに参画することとなったのです。
LIVE-Link ライブ配信イメージ
その後、この企画は着実に進んでいます。
まず、予選競技については、ビデオ審査の形をとることとし、各チームから規定に則って演技動画ビデオを送ってもらうことにしました。日本体操協会男子新体操委員会審判団が8月22日と23日の二日間かけて、これらの映像をもとに公平、公正に採点し、決勝進出チームを決定しました。審判団もこのような映像による採点には慣れておらず、思ったより時間がかかったとのことでしたが、新たな採点方式として非常な手応えを感じたようです。
8月24日に行われた決勝進出チーム発表のリモート会見で、大会実行委員長は、演技のミスも少なく、また思ったより参加校も多く与えられ、今後の取組みに大きな期待感を表していました。なお、コロナウィルスの感染防止のため、リアルではなく、リモートで行った男子新体操オンライン選手権の決勝進出チーム発表の記者会見については、別途、記事を掲載する予定です。
リモート会見の様子 YouTubeからのスクリーンショット
いよいよ、9月12日にはジュニア部門(小4~中3)、13日には高校生部門(高1~高3)の決勝競技が行われます。こちらの方は、それぞれの練習場から各チームが自分たちの演技をライブ映像としてYouTubeに配信し、その中継映像を審判団が採点することとなります。
正式の全国大会として実施する以上は、演技そのものは自分たちの練習場で行うにしても、その映像については、同レベルのものを送れるようにしておかないと、公平な採点ができなくなってしまいます。むろん、その学校によってWi-Fi環境が異なり、機器を揃えたからと言って、問題が解決するものでもありません。これについて、CBのLIVE-Link事業部は、会場に持ち込むのは最小限の機器で鮮明な画像を途切れることなく送る準備を進めるため、テレビ局のネット中継で培った技術を応用し、それを実現できるよう工夫することにしました。
また、実際に映像を見て行うこととなる採点についても、採点者がそれぞれの場所でバラバラに見るのではなく、100インチの大型モニターを8人の審判団が4人ずつ2列で交互に座り、密を避けた上で、一つの場所でジャッジする形を取ることにしました。これによって、まさしく公平な採点を期することができるのです。採点会場についても、テレビ朝日がオンライン中継のし易さを考慮して、テレビ朝日内に準備することになりました。CBが各会場の映像を集約してコントロールするセンターと、審判団の部屋を分け、公平さを保ったまま、不測の事態には迅速に対応できる環境を整えることとなったのです。
また、決勝後には「男子新体操オンライン選手権スーパーエキシビジョン」が計画されています。こちらは、予選を通過できなかったチームの発表の場となるとともに、キッズから社会人、果てはプロパフォーマーまで、男子新体操を愛するすべての世代が参加することができます。順位を競う選手権大会と異なり「大事な人たちへの想いを届ける演技会」。決勝競技と同じくライブで全国をつないでの演技配信が予定されています。これもまた、きっと多くの感動を与えてくれることでしょう。
このようにして、「男子新体操オンライン選手権2020」と銘打った大会が、多くの関係者の努力と工夫により具体化して来ました。現在、9月13日の決勝開催日に向けて、最終的な準備が進められています。
大会におけるすべての選手・関係者の笑顔を夢みて・・・
SDGsの目標4では「質の高い教育をみんなに」と言われています。
コロナウィルスという予想もつかない事態に直面した際にも、質の高い教育を提供し続けることが求められているというべきでしょう。教育の一環であり目標でもあるスポーツの大会を、リアルではないがウエブを使って実現することは、他の教育の場面においても工夫しながら、「持続」していくことにつながるものと思います。コロナ禍という、まさしく人類が経験したことのないような状況にあってもそれに立ち向かって教育を進めるという、SDGsの理念に沿った動きであると言うことができるでしょう。
今後の関係者のますますの活躍を祈るものです。
なお、この男子新体操オンライン選手権の決勝戦は、以下のLIVE-Linkで生配信されます。ご興味のある方は、選手たちの心のこもった演技をぜひご覧ください。
https://www.live-link.life/online/mrgonline2020
大会日程 : ジュニア決勝9月12日(土)16:30〜18:00 高校生決勝9月13日(日)13:00〜16:00