2026年4月21日、東京国際フォーラムにて「第41回世界獣医師会大会(WVAC 2026)」が華やかに幕を開けました。1863年の創設以来、世界で最も権威ある獣医学術の祭典として知られる本大会。日本での開催は1995年以来、実に31年ぶりの快挙となります。
今回のテーマは「One Health for a Better Tomorrow: Veterinary Medicine Holds the Key / ワンヘルスで世界の獣医療が示す未来」です。主催の公益社団法人日本獣医師会を中心に、世界各国から約6,000人の専門家が集結し、24日までの4日間、地球規模の健康課題をめぐる熱い議論が展開されています。
厳かな幕開け:天皇皇后両陛下のご臨席と国際的な連帯
初日午前10時、式典は天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、厳かな空気の中で開始されました。会場は国際会議に相応しい格調高い雰囲気に包まれ、日本のホスピタリティと国際的な連帯を示す場となりました。
壇上には、主催者である日本獣医師会会長の藏内勇夫氏、同副会長の鳥海弘氏をはじめ、共催の日本学術会議会長・光石衛氏、そしてWVA前会長のジョン・デ・ジョン博士が集結しました。さらに来賓として、鈴木隼人内閣府副大臣、鈴木憲和農林水産大臣、小池百合子東京都知事が列席し、高市早苗首相からも祝辞が寄せられました。産官学が一体となり、日本のリーダーシップを世界へ示す力強い布陣が顔を揃えたのです。
天皇陛下が語られた「慈しみ」と「ワンヘルス」への指針
天皇陛下は、格調高い英語でお言葉を述べられました。まず触れられたのは、長年、御所において保護犬や保護猫を家族として迎え、慈しみを持って共に生活されてきたご経験でした。言葉を交わすことのできない動物たちの命を救い、その健康を守り続ける獣医師の献身的な努力に対し、個人的な想いを重ねつつ、心からの深い感謝と敬意を伝えられました。
さらに陛下は、現代社会における獣医師の役割を極めて高く評価されています。臨床の現場のみならず、公衆衛生の向上や社会の安定に幅広く寄与している事実に加え、特に「人と動物の健康、環境の健全性を一体として捉える『ワンヘルス』の重要性が世界的に高まっている」という点は、陛下が最も強調された柱の一つでした。
一国の象徴が具体的な科学的理念としての「ワンヘルス」に踏み込み、それが次世代の地球を健やかに保つ鍵であると力強く示された事実は、世界の獣医療界にとって歴史的な指針となり、会場を埋め尽くした数千人の専門家たちに深い感銘を与えています。
日本人初のWVA会長就任:福岡から世界へ、社会実装への決意
今大会において最も特筆すべきニュースは、日本獣医師会会長の藏内勇夫氏が、アジア人として、そして日本人として初めて世界獣医師会(WVA)の会長に正式に就任したことです。
これまで日本は、国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子氏や、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長など、卓越したリーダーを国際機関のトップへ輩出してきました。世界50万人以上の獣医師を代表する組織の舵取りを日本人が担うことは、また新たな歴史の1ページとなります。
藏内新会長は、自身の地元である福岡県において全国初の「ワンヘルス推進基本条例」の制定を主導するなど、かねてよりこの理念を単なる学術的な議論に留めず、行政や生活の仕組みに組み込む「社会実装」に尽力してきました。就任にあたり同氏は、日本が先行して築き上げたこの実装モデルを世界標準へと昇華させる強い決意を表明しています。日本の緻密な知見が世界をどう変えていくのか、新たなリーダーシップへの期待が寄せられています。
多角的なプログラムとサステナブルな運営
大会期間中、専門家のみならず一般市民も参加するプログラムが数多く用意されています。本日23日に開催されている「市民公開講座」では、伴侶動物と人の心身の健康の関係を探る「Thanks Buddy !」や、使役犬のデモンストレーションなど、ワンヘルスの理念を身近に体感できる機会が提供されています。
また、運営自体がSDGsのモデルケースとなっている点も今大会の大きな特徴です。ペットボトル配布の完全廃止とウォーターサーバーの設置、会場内の生ゴミをバイオガス化してエネルギーとして再利用するシステム、さらに数万枚規模の紙資料をデジタルガイドへ移行する試みなど、大規模イベントにおける環境負荷軽減の新たな世界標準を、ここ東京から発信し続けています。
未来への提言:共に歩むこと
WVAC 2026は、人・動物・環境の境界線上で起きている地球規模の課題に対し、私たちがどう向き合うべきかを問い直す場となっています。
藏内新会長のもと、日本がリーダーシップを発揮して進めるワンヘルスの実装は、SDGsが掲げる「誰も取り残さない」健やかな未来実現のための中心軸となり、今回のWVAC2026がその大きな第1歩を踏み出したと言えるでしょう。
◆第41回世界獣医師会大会2026 公式サイト
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