田端浩観光庁長官インタビュー
観光事業は、「成長戦略の柱」「地方創生の切り札」と位置づけられ、国家的戦略としても「観光立国推進」が大きく掲げられています。
その成果として、2018年度の訪日外国人旅行者数は3,119万人(日本政府観光局JNTO)に達し、訪日外国人旅行消費額の総額は4兆5,189億円に上りました。そして、2019年度も順調に数値を伸ばし、2020年の4,000万人、2030年の6,000万人という目標に向けて、確実に「観光立国」が推進されています。
そのような状況の中、「持続可能な観光先進国」を掲げ、“住んでよし、訪れてよし”のスローガンの下、観光政策を導いているのが「観光庁」です。
『SDGs Japan Portal』のインタビュー第二弾は、田端浩観光庁長官に、SDGs的視点から日本の観光戦略について伺いました。
WTTCグローバルチャンピオンアワード受賞。
危機管理により、安心して訪問できる国づくり。
WTTCグローバルチャンピオンアワード受賞おめでとうございます。
日本の危機管理システムが非常に優れているということが、
世界に認められたということだと思います。
海外のどこの国に出かけても、
“日本では災害やツーリズムについてとういった対策を打っているのか”
とよく聞かれるのですが、ぜひ、今回のアワードに至った経緯や
取り組みについて教えていただけますか。
―このアワードは、大きな成果をもたらした政策やリーダーシップに対し
国などを表彰する年間賞となっています。
今回は防災・危機管理システムに関するリーダーシップについての表彰であり、
増加している訪日外国人旅行者や外国人居住者に向けた
災害への対応についての取り組みが高く評価されました。
この受賞は、日本が危機管理の世界的リーダー的存在であることが
認められたということだと考えています。
昨年(2018年)、西日本豪雨では歴史的な被害が出て、
台風21号では、関西国際空港の橋にタンカーが衝突して不通になり、
今年(2019年)の東日本豪雨ではブラックアウト、大規模停電があって、
情報がシャットアウトされてしまう…といったことがありました。
そのような中で、アナウンスが多言語対応していない、
どこにアクセスすれば必要な情報が得られるか分からないなど
さまざまな批判が外国人の方々から寄せられました。
それらの声を受けて、外国人の方への対応、特に災害時の対応を強化するために
さまざまな取り組みを行ってきました。
その結果、我々がPRしたわけではないのですが、
WTTCからアワードに決まったと連絡が入りました。
こういった取り組みは、とても手間がかかることだし、
混乱している時の発信だから、日本語でもたいへんなのに
外国の方に十分な情報を提供するということはハードルが高かったのですが。
その取り組みが今回ほめていただくことになって、
今後さらに充実させていこう、という私たちのモチベーションを
大いに高めてくれることにつながっています。
昨年の西日本豪雨や台風21号の際には、
関西に居る外国人の友人から、 “状況を教えてください”
というお願いがたくさん私のツイッターに寄せられました。
外国人向けの情報が日本語だけで発信されていたんですね。
私は、行政が出している情報を翻訳してツイートしたのですが
災害時の外国人対応は、まだまだ進んでいないということを感じました。
また、台風などの災害時に、よく報道のレポートで
“駅は閑散としています”というコメントの背景に
途方に暮れる外国人の姿が映されたりしているのを見ると
“彼らには交通に関する情報が伝わっていないんだな”と
悲しい気持ちになることもありました。
でも、今回のアワード受賞を知り、対応の進化を知りました。
さまざまなアプリが開発され、本当に充実してきたと実感しています。
―政府も注力していますし、いろんなアプリも充実してきています。
NHKでも災害時には画面にQRコードを表示して
外国語に対応することをはじめています。
そこでは、英語サイトへの誘導などもできるようです。
我々日本人は多くの場合、NHKの報道を見て情報を得るわけですが、
そこにQRコードをつけて外国語対応できるようにすれば、
外国の方も同じ情報を共有することができますからね。
これは、外国人からも高く評価されていると聞いています。
これらも“住んでよし、訪れてよしの国づくり”の一環だと考えています。