2026年4月21日から24日にかけて、東京国際フォーラムにおいて「第41回世界獣医師会大会(WVAC 2026)」が開催されました。本大会は、世界各国から獣医師、研究者、関係者たちが集う獣医学分野における世界最大級の国際会議の一つで、約70の国と地域から約6,000人が参加しました。
本大会のテーマは、「One Health for a Better Tomorrow: Veterinary Medicine Holds the Key(より良い明日のためのワンヘルス:獣医学が鍵を握る)」であり、人間・動物・環境の健康が相互に密接に関係しているという「ワンヘルス」の理念のもと、獣医学、公衆衛生、環境持続性に関する地球規模の課題について多くの会議やシンポジウム、セッション等を通じて活発な議論と交流が行われました。
この国際的な大会の会場正面入口では、「竹あかりカーボンゲート」と名付けられたモニュメントが参加者を迎えていました。この印象的なアートモニュメントは、本大会の理念であるワンヘルスを象徴的にそして具現的に表現したものです。
この竹あかりカーボンゲートが、大会4日間の間、地球の未来のために世界中から集まった人々を柔らかく、温かな光で見守ってくれました。ワンヘルスという本大会の成果が、世界中に届くことを願って!
本記事では、この竹あかりカーボンゲートの成り立ちからその意義についてレポートします。

カーボンから光へ:ワンヘルス・カーボンゲートの再解釈
「人と動物の健康と環境の健全性は一つ」という「ワンヘルス」の理念を実体化したワンヘルス・カーボンゲートは、2022年に隈研吾建築都市設計事務所により福岡県筑後広域公園のために設計された、環境配慮型カーボンファイバーによる螺旋状のモニュメントです。その軽やかで流動的な構造は開放性と調和を表現し、風や光、人の流れを受け入れながら周囲の自然環境と一体化する設計となっています。
WVAC 2026開催に際して、この建築コンセプトをもとにワンヘルス・カーボンゲートが「竹あかり」版として全てに竹を用いて再構築され、東京国際フォーラム入口に設置されたのです。カーボンファイバーによる螺旋状のモニュメントは竹を用いたものに変えられ、それに、竹に穴を開けて光の模様を生み出す日本の伝統技法「竹あかり」を組み合わせることで、本モニュメントは来場者を迎える光のゲートへと大きく変貌しました。
伝統と持続可能性の融合
竹あかりカーボンゲートは、ワンヘルス・カーボンゲートの形態の再解釈にとどまらず、現代の環境課題への具体的な応答でもあります。日本に豊富に存在する竹資源を活用することで、放置竹林の問題に向き合いながら、持続可能な資源利用の可能性をも提示しているのです。
また、竹あかりは福岡における国際的な文化・スポーツイベントにも活用されてきました。2023年の体操・新体操世界選手権、2025年のワールドスケートボードストリート2025北九州、ワールドブレイキング、さらにはフィギュアスケート公演「BISF24」など、さまざまな場において演出要素として用いられ、空間に光と文化的価値をもたらしてきた実績を持っています。
こうした取り組みは、伝統技術と現代デザインの融合を通じて、文化的資源が社会的・環境的課題の解決に寄与し得ることを示しています。


ワールドスケートボードストリート2025北九州の表彰式を飾った竹あかり
ワンヘルスの具現化
竹あかりカーボンゲートは、「ワンヘルス」の理念を体現する存在です。
獣医師は動物医療にとどまらず、食品安全、公衆衛生、人獣共通感染症の予防などにおいて重要な役割を担うことが本大会において強調されています。これらの多くは、人・動物・環境の相互作用に起因するものです。
こうした文脈において、竹あかりによる光の構造は象徴的な意味を放っています。
光が竹を通して広がる様は「つながり」と「相互依存」を示し、連続する曲線の形状は分野や領域を超えた「一体性」を表現しています。また、カーボンから竹への素材の転換は、持続可能性への適応を示唆しているのです。
これらの要素は、地球規模の課題解決に不可欠な分野横断的・協働的アプローチを象徴しています。
未来へ向けたモニュメント
来場者が竹あかりカーボンゲートを通過することは、単に会場へ入る行為にとどまらず、共通の未来へのビジョンへと足を踏み入れることを意味しています。そして、そのビジョンと共に会場を後にし、健やかな明日のためにそれぞれの場所に戻っていくことを約束しているのです。
本モニュメントは、WVAC 2026の開催を記念するとともに、新たな感染症、環境問題、食料安全保障といった現代の課題が単独では解決できないことを示唆しています。
そして、これらの課題に対しては、「ワンヘルス」に基づく統合的な取り組みが不可欠なのです。
なお、本取り組みは、日本文化の国際発信およびその保存・発展、地域活性化の推進を目的とする一般社団法人「日本国際広報戦略機構」の支援により実現しました。同機構は、文化を通じて地域と世界を結び、持続可能な社会の実現に寄与しています。
竹あかりカーボンゲートは、単なる建築物、モニュメントを超え、
光・文化・協働をつなぐ象徴的なゲートとして、人と人、分野、そして国境を越えた連携を促し、持続可能で健やかな未来への道筋を示す存在なのです。

◆第41回世界獣医師会大会2026 公式サイト
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